研究課題/領域番号 |
18K06686
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石澤 啓介 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60398013)
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研究分担者 |
今西 正樹 徳島大学, 病院, 助教 (00734344) [辞退]
石澤 有紀 徳島大学, AWAサポートセンター, 准教授 (40610192)
座間味 義人 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (70550250)
武智 研志 徳島大学, 病院, 特任助教 (90793240)
中馬 真幸 徳島大学, 病院, 特任助教 (20819289)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大規模医療情報データベース / 大動脈解離 / ドラッグリポジショニング / 医療ビッグデータ / 内皮機能障害 |
研究実績の概要 |
当研究課題では、リアルワールドデータである大規模医療情報解析と、新規モデル動物を用いた基礎研究を融合させることで大動脈解離発症の病態解明と予防法開発を目指している。2018年度は、これまで検討を重ねていた薬物誘発性大動脈解離易発症モデルマウスの確立に成功した。内皮障害を惹起するL-NAME、血圧を上昇させる angiotensin II、弾性線維の脆弱化を惹起するBAPNの3剤を投与する本モデルマウスをLABモデルと名付け、病態解析から内皮細胞における細胞接着分子の発現低下が解離発症の機序の一つであることを見出した。また、大規模医療情報データベースの一つ、日本医薬品医療機器総合機構が提供するJADER (Japanese Adverse Drug Event Report database) を用い、薬物治療中に急性大動脈解離を発症した症例について、その被偽薬と予防効果が示唆される候補薬を解析・抽出した。解析により抽出された発症予防候補薬の一つとして脂質異常症治療薬であるスタチンに着目し、代表的なスタチン系薬剤であるピタバスタチンの薬効についてLABモデルマウスを用いて検証した。その結果、ピタバスタチンを前投与した群において解離発症が有意に抑制され、in vivo研究に加え培養細胞を用いたin vitro研究を行うことで、ピタバスタチンによる抗炎症効果、内皮細胞保護効果がその薬理作用である可能性を明らかにした。現在は、JADERやその他の大規模医療情報データベースに加え、遺伝子発現データベース等も利用し、解離発症予防効果が予測される候補薬剤を網羅的に抽出しているところであり、今後はよりドラッグリポジショニングに向けた臨床応用の実現可能性が高い候補薬剤についてLABモデルマウス、培養細胞等に及ぼす影響を検討する計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、近年進歩が著しいデータマイニング研究に従来の基礎研究を融合させる新しい手法を導入することで、大動脈解離発症の病態生理・分子機序に立脚し、かつ臨床応用が見込める発症予防戦略の開発を目指している。現在までの検討から、実際にリアルワールドデータから得られた情報がin vivo、in vitro研究によって検証され得ることを明らかにしており、ドラッグリポジショニングに向けた非常に有用な新規の研究手法が確立されたと考えられる。このことから、概ね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在解析中の各種リアルワールドデータから得られた大動脈解離発症予防効果が期待される候補薬剤について、LABモデルマウスを用いて解離発症に対する効果を検討する。さらに培養細胞を用いたin vitroの実験にて作用機序を検討する。具体的には、血管内皮細胞に対する機能保護効果を、細胞生存率、一酸化窒素合成酵素活性、細胞接着分子の発現変化などを指標に評価する。また、血管平滑筋細胞においては細胞増殖能を、線維芽細胞においては細胞外基質の産生、線維化に関わるTGF-βやSmadなどのシグナル伝達分子の活性化を指標として候補薬剤の作用を検討する。さらに、血管内皮機能の保護に重要であることがわかっているERK5の内皮特異的欠損マウスにおいて各薬剤の効果が消失するか否かを検討し、解離発症の鍵を握ると考えられる内皮機能への影響と分子機序の詳細を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 3月に納品となり、支払が完了していないため。 (計画) 4月に支払が完了する予定である。
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