研究課題/領域番号 |
18K06687
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
中川西 修 東北医科薬科大学, 薬学部, 准教授 (50296018)
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研究分担者 |
大河原 雄一 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (40333801)
小野木 弘志 東北福祉大学, 健康科学部, 講師 (50610200)
根本 亙 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (80635136)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アンジオテンシン系 / うつ病 |
研究実績の概要 |
新規医薬品開発には巨額の開発費及び期間を要するため、国が承認した既存の医薬品から新規作用を有する医薬品を見出すエコファーマという試みが提唱されている。高血圧を併発しているうつ病患者では、中枢移行性の高いAngiotensin (Ang) 変換酵素 (ACE) 阻害薬CaptoprilやEnalaprilが抑うつ状態を改善することが報告されている。これらの報告を基に、本研究ではエコファーマという観点を加味し、Ang系を標的とし、臨床使用されているCaptoprilの抗うつ作用について検討を行った。すなわち、うつ病のモデル動物である嗅球摘出 (OBX;Olfactory bulbectomy) マウスに対してCaptoprilを投与し行動薬理学的に検討した。 うつ様行動または抗うつ効果のスクリーニングに用いられるテールサスペンション試験の結果では、術後3週目におけるOBXマウスはコントロールのマウスと比較し無動時間の有意な延長を示した。この無動時間の延長はうつ様行動を示しており、Captopril 10 mg/kg の単回や3日間投与ではなく7日間投与によりその無動時間は有意な減少を示した。すなわち、Captoprilにより抗うつ作用が認められた。 次に、Captoprilの抗うつ作用の機序を探る目的で海馬歯状回における神経新生に対する影響を免疫組織化学的に検討した。その結果、OBXマウスの未熟神経新生細胞数は有意な減少を示し、Captoprilの反復投与により有意に抑制された。 これらの結果より、Captoprilの抗うつ作用には海馬の神経新生促進が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
うつ病モデル動物であるOBXマウスにCaptoprilを慢性投与した際抗うつ作用が認められた為、当初の計画通りメカニズムを明らかにしている。
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今後の研究の推進方策 |
Captoprilの抗うつ作用に海馬の神経新生促進が関与していることが示唆されたことからその機序を検討していく。高血圧ラットへのCaptoprilの投与は内因性AngⅡを低下させる一方、Ang (1-7) を増加させるとの報告があるため、Captoprilの抗うつ作用の機序として、AngⅡの生成抑制あるいはAngⅡの代謝産物であるAng (1-7) の増加が関与している可能性を想定し行動薬理学的検討を行う。AngⅡまたはAng (1-7) を正常マウスの脳室内へ投与(または海馬に微量注入)し、うつ様行動または抗うつ作用が認められるか行動薬理学的に検討する。その際、各種アンタゴニストを用いAngⅡまたはAng (1-7) 投与による行動変化の影響を観察する。 うつ様行動が認められる術後3週~4週間目のOBXマウスの海馬を用いてACE、AngⅡ、AT1受容体、AT2受容体、ACE2、Ang (1-7)およびMas受容体を免疫組織学的手法およびウエスタンブロット法により測定し、うつ状態時における海馬内ACE-AngⅡ-AT1受容体系とACE2-Ang (1-7) -Mas受容体系の変化について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね計画通り予算を支出した。
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