網膜色素変性症(RP)の原因遺伝子の1つであるPde6aにミスセンス変異をもつRPモデルマウスであるnmf363の網膜からtotal RNAを抽出し,micro RNAの発現量変化を網羅的に解析した.その結果を基に定量的RT-PCRを行い網羅的micro RNA解析の結果を確認した.その結果,nmf363の網膜において発現量が有意に増大していたmiR-712-3pと発現量が有意に減少していたmiR-7685-3pについて,これらのmiRのinhibitorあるいはmimicがnmf363の視細胞死を抑制するかどうかを検討した.生後15日のnmf363にmiR-712-3p inhibitorあるいはmiR-7685-3p mimicをそれぞれ網膜下投与した.その10日後に,視機能を評価するため,明順応下で網膜電図を測定した.その後網膜を単離し,錐体細胞を特異的に標識するAlexa Fluor 488標識ピーナッツアグルチニンで染色し,網膜進展標本を作製した.共焦点レーザー顕微鏡を用いて画像を取得し,網膜0.2 mm2に含まれる錐体細胞数を計数した.miR-712-3p inhibitorおよびmiR-7685-3p mimicは,生後25日における明順応下網膜電図の振幅を有意に増加させた.また,生後25日のnmf363における錐体細胞の脱落は、miR-712-3p inhibitorおよびmiR-7685-3p mimicの投与により有意に抑制された.以上の結果から,nmf363における錐体細胞障害の進行には,miR-712-3pの発現量増加やmiR-7685-3pの発現量減少が関与していることが示唆された.また,これらの変化を補正することでnmf363における錐体細胞障害の進行を抑制できることが示された.
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