研究課題/領域番号 |
18K06690
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
後藤 明彦 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (00297293)
|
研究分担者 |
小松 則夫 順天堂大学, 医学部, 教授 (50186798)
宮澤 啓介 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (50209897)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | primary myelofibrosis / UT7/TPO / ruxolitinib / calreticulin / ER stress |
研究実績の概要 |
原発性骨髄線維症(PMF)の主要なドライバー変異であるcalreticulin(CALR)のtype1(del52)、およびtype2(ins5)の変異遺伝子をPMFの病態の核となる巨核球系細胞のモデルとなるUT-7/TPOに導入し、安定的変異遺伝子導入株を得た。ベクター遺伝子と正常CALR遺伝子導入株をコントロールとして作成した。コントロール細胞株は親株と同様にthrombopoietin(TPO)依存性であるが、変異遺伝子導入株はTPO非依存性の増殖能を獲得しており、PMFの腫瘍性性格を反映していると考えられた。 定常増殖条件下でのLC3やp62の経時的変化の検討でCALR変異導入細胞ではオートファゴゾーム形成が、TPOの存在に無関係に抑制されているが、無血清条件下で比較的早期にはベクターコントロールと同様にオートファジーが誘導されることが観察された。また、マクロライドの一種であるクラリスロマイシン(CAM)は単独ではCALR変異陽性細胞に対する増殖抑制効果を示さなかったが、ルキソリチニブ(RUX)との併用によりRUXの細胞増殖抑制作用を増強した。CAMはオートファジーを阻害するが細胞内タンパクのチロシンリン酸化は抑制せず、RUX+CAMはRUXのチロシンリン酸化抑制作用にCAMのオートファジー阻害作用が加わったことで相乗的作用が生じたと考えられた。 骨髄腫細胞ではマクロライドによるオートファジーの阻害と同時にプロテアソームを阻害すると強力にERストレスを高め、アポトーシスを効率的に誘導することから、すでに臨床に用いられているボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、イキサゾミブを骨髄腫細胞株でスクリーニングしたところボルテゾミブが最も効率的にマクロライドとの併用効果があることを確認した。 これらはRUXの臨床効果をマクロライドが増強する可能性があること、プロテアソーム阻害がさらにRUXの効果を増強する可能性があることを示唆すると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
変異CALR導入細胞はthrombopoietin(TPO)非依存性に増殖可能であるが、コントロールの細胞と同じTPO入りの培養液でしばらく継代したところ、変異CALRタンパクの発現が落ちたため、再び変異CALR導入クローンを作成する必要があったが、プロテアソーム阻害薬としては骨髄腫細胞株をモデルとしてボルテゾミブが最も効率的にマクロライドと併用効果を示すことが明らかになったため、次年度ではボルテゾミブとルキソリチニブとの併用、さらにはマクロライドとの3者併用効果をin vitroならびにin vivoで検証していくことが可能である。
|
今後の研究の推進方策 |
CALR変異導入UT-7/TPOに対するルキソリチニブの増殖抑制効果を増強する候補薬剤としてボルテゾミブとマクロライドを用いて、in vitroでのERストレス増強効果と細胞死誘導効果を多面的に明らかにする。またin vivoでの薬剤併用効果をFlorらが報告(PNAS 114: E8234- 43, 2017)したゼブラフィッシュを用いた系で判定していくことを目標とするが、この系に関しては当研究室で安定した結果が得られるようにエスタブリッシュすることがまず課題である。東京医科大学病態生理学教室ではゼブラフィッシュを用いた疾患モデルの開発と治療法探索を行っており、必要があれば助言や共同研究をお願いすることが可能である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していたヨーロッパ血液学会出席を中止し旅費が無くなったことと、研究代表者の所属の異動で主となる研究室を移すことになり、その機器等のセットアップをする期間を考慮して試薬等の消耗品の購入を控える必要があったため、次年度使用額が生じた。 次年度は控えていたin vitroのアッセイに用いる薬剤、抗体等の試薬の購入と共にin vitroのアッセイ系樹立のために必要な物品を揃えることに次年度使用額を用いる。また元は1回としていた海外学会への出張予定がヨーロッパ血液学とアメリカ血液学会の2回となる見込みで旅費にも次年度使用額の一部を使用する可能性がある。
|