研究課題/領域番号 |
18K06692
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
天ヶ瀬 紀久子 立命館大学, 薬学部, 准教授 (60278447)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | グルタミン酸 / 小腸炎 / 抗がん剤 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グルタミン/グルタミン酸の消化管に対する作用を解析し、消化管疾患の新たな治療ターゲット分子を提案することである。がん化学療法剤による下痢の重篤化や体重減少、組織学的に小腸絨毛の短縮や腺窩の破壊を特徴とする腸炎に対する予防・治療法の確立を目指す。 本年度は、これまでin vivoで検討していた抗がん剤誘起腸炎に対するグルタミン酸の効果についてin vitro試験を実施した。5-フルオロウラシル(5-FU)は臨床において最も使用される抗がん剤の1つであり、実際、マウスに連続投与すると下痢を伴う腸炎(mucositis)が観察される。グルタミン酸の経口投与は5-FU誘起腸炎の程度を軽減することを見出している。がん化学療法剤誘起腸炎の病態は未だ十分には解明されておらず、現在はアポトーシスおよび非特異的炎症反応の観点から病態解析を行っている。5-FU投与によって誘導されるアポトーシスについて組織学的に検討した結果、グルタミン酸投与群では抑制傾向が認められた。そこでアポトーシスおよび炎症反応に関わる因子の探索を、in vitro実験系を確立し行った。研究代表者は、これまでに腸内環境の観点から、抗がん剤誘起腸炎に対して、抗生物質や、消化管内細菌叢のバランス調節に大きく関与する乳酸菌プロバイオティクスが有用であることを報告しており、グルタミン酸がこれら因子にも影響を及ぼすのか、アポトーシス誘導への影響など新しいターゲット分子の存在について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、所属機関の異動によって実験進行がやや遅れていたが、現在は計画的に順調に進んでいる。本年度は、in vivo実験系に加えて、in vitro実験系を確立し、抗がん剤によるアポトーシス誘導に対するグルタミン酸の影響を評価した。次年度は、同定した分子のin vivo動物実験モデルでの役割について検討を加える。さらには炎症性腸疾患に対するグルタミン酸の効果の検討も実施し、消化管炎症に対するグルタミン酸の有用性について論文にまとめ投稿すると共に、国内外の学会において研究結果を発信する。
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今後の研究の推進方策 |
グルタミン酸の消化管炎症に対する有用性を証明し、抗がん剤治療におけるQOL向上を目指した消化管傷害に対する予防・治療の新たな手段を提供するため、in vivoおよびin vitro実験系を用いターゲット分子の解析を行う。 具体的には、薬剤性腸炎において組織化学的手法を用いたアポトーシスの検出、腸上皮細胞の粘液産生とそれに関わるタンパクの分布、タイトジャンクションタンパクの発現変動について検討する。また、薬剤性腸炎に対し保護作用を示すロイコトリエンBLT2受容体の関与も検討する。グルタミン酸は経口投与のみならず、グルタミン酸含有特殊飼料または飲水による摂取法も用い持続的摂取による影響も検討する。またin vitroではヒト結腸癌由来の細胞株Caco-2細胞を用いた抗がん剤による細胞障害性とそれに関わるグルタミン酸の影響を分子生物学的・生化学的手法を用いて検討する。併行して、慢性炎症性腸疾患に対する効果を検討するため、デキストラン硫酸ナトリウム誘起腸炎モデルを用いたグルタミン酸の影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はin vivo実験の結果を基にin vitro実験系を立ち上げ実施した。そのため動物購入費および飼育管理費の支出が予定より減少した。また、外国旅費支出がなかったことにより次年度使用額が生じた。 次年度は本事業計画の最終年度であり、本年度得られたin vitro試験の結果を基に、in vivo実験を進めるため、動物購入費および各種炎症性パラメーターの測定試薬の購入費に用いる。
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