研究課題/領域番号 |
18K06695
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研究機関 | 神戸薬科大学 |
研究代表者 |
小山 豊 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00215435)
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研究分担者 |
泉 安彦 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (60456837)
道永 昌太郎 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (60624054)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | エンドセリン / 脳浮腫 / アストロサイト / ETB受容体 / Eph/ephrinシグナル |
研究実績の概要 |
脳病態時における脳浮腫発生および神経突起伸展に対するアストログリアの役割について研究し、2019年度では以下の知見が得られた。 ・前年度の検討で、マウス外傷的脳損傷モデルでのエンドセリンETB受容体の遮断が脳微小血管のバリア機能を高めるangiopoietin-1発現を増加させることを認めた。本年度はエンドセリン-1(ET-1)によるangiopoietin-1発現変化について、培養細胞で検討し、ETB受容体の刺激がアストロサイトのangiopoietin-1を低下させること認め、アストロサイトのETB受容体が脳浮腫改善薬の標的分子となりうることを示唆した。そして、これらの結果を論文公表した(Michinaga et al.,J.Neurochem.2020)。またangiopoietin-1と同じく微小血管のバリア機能を高めるsonic hedgehogの発現も、ETB受容体の遮断により増加することを認めた。 ・前年度の検討で肺動脈性肺高血圧症の治療薬bosentanとambrisentanが、マウス外傷的脳損傷モデルでのBBB破綻と脳浮腫を抑制することを示した。本年度では、これらET受容体拮抗薬の作用機序を検討し、両薬物がアストロサイト由来の脳浮腫惹起因子であるMMP9およびVEGFの発現を抑制することを認めた。 ・前年度の検討でアストログリア由来の神経突起伸展の抑制分子ephrinファミリーの中で、ET-1は培EphrinB1およびB3の発現を低下させることを見出した。本年度は更に検討を加え、ET-1は、Ephrin-A2およびA4の発現も低下させることが示された。一方で、ET-1によるephrin発現低下をin vivoで確認するため、非傷害ラットへETB受容体拮抗薬Ala-ET-1を3-7日間連投したが、何れのephrinについて脳内での発現低下は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規脳浮腫改善薬の標的分子としてのアストログリアET受容体の評価において、bosentanおよびambrisentan有効性を示唆したが、本年度の研究ではその薬効に関わる分子的基盤を得ることが出来た。これらの実験結果について、現在、論文投稿中であり、今年度中には公表されると思われる。この点で、当初の実験計画が順調に進捗していると考える。他方、神経再生促進作用に関する検討では、培養アストロサイトで認められたET-1によるephrinの発現減少をETB受容体刺激薬Ala-ET-1を投与したラット脳で観察したが、結果として有意な減少を認めなかった。今後、実験モデルを変えてephrinの発現変化を観察するとともに、ephrin以外の神経突起伸展阻害因子の探索を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
・脳浮腫改善薬の開発に関しては、外傷的脳損傷モデルでの抗脳浮腫作用が認められたbosentanとambrisentanについて、投与時期の至適化を行う。また、既に脳浮腫改善効果が認められている薬物(NKCC1阻害薬、性ホルモン)との併用による相乗効果の確認等を行う計画である。また、外傷的脳損傷モデルでの結果を受け、これらET拮抗薬の脳浮腫改善作用を脳虚血など他の脳傷害モデルでも検討してゆく。 ・神経突起伸展促進薬の開発に関しては、培養細胞で得られたET-1によるephrin発現の低下が非傷害ラットへのETB受容体刺激薬の投与では確認できなかった。これについて、ET-1の作用発現には何らかの傷害を負荷する必要性を考え、次年度では外傷的脳損傷モデルでのephrin発現とそれに対するET-1の作用を検討する。また、新たにephrinの受容体であるEphファミリーの発現についても培養アストロサイトおよび脳損傷モデルでET-1の作用を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度中に予定していた旅費は、2020年2月以降での学術集会の取りやめ等の理由により当初の予定通りには執行されなかった。そのため次年度使用額が発生した。この経費は、次年度の物品費に充てる予定である。
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