研究実績の概要 |
脳病態時における脳浮腫発生および神経突起伸展に対するアストログリアの役割について研究し、2020年度では以下の成果が得られた。 ・前年度までの検討で肺動脈性肺高血圧症の治療薬として用いられているエンドセリン(ET)拮抗薬bosentanとambrisentanが、マウス外傷的脳損傷(TBI)モデルでのBBB破綻と脳浮腫を抑制することを示した。本年度では、これらの薬物がin vitro TBIモデルでのET-1による脳浮腫惹起因子の産生を抑制することを認め、これまでの結果を論文公表した(Michinaga et al.,Neuropharmacology,(2020)175:108182)。 ・マウスTBIモデルでの脳浮腫発生が、血管透過性調節因子であるSonic hedgehog(Shh)の発現低下を伴なうこと、および、このTBIにより低下したShh発現はETB受容体拮抗薬BQ788により回復することを見出した。この結果は、ETB拮抗薬の脳浮腫抑制作用にShh発現の回復が関わることを示唆する。そしてこの結果を、論文公表した(Michinaga et al., Neurochem Int.(2021)146:105042)。 ・前年度までの検討で、ET-1はアストログリア由来の神経突起伸展の抑制分子ephrin-A2, -A4, -B2および-B3の発現を低下させることを見出し、ETが神経突起促進作用を持つことを示唆した。本年度は、このET-1の作用がETB拮抗薬で阻害されること、ETB受容体刺激薬がET-1と同様の作用を示すことを見出し、ETのephrin発現への作用がETB受容体を介することを明らかにした。そして、これらの結果を論文公表した(Koyama et al.,Neurosci Lett.(2021)741:135393)。
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