研究課題
脳・神経細胞において樹状突起スパインは、外部刺激により形態や機能を可塑的に変化させ、記憶・学習などの高次脳機能に重要な役割を果たしている。スパ インの形態はアクチン細胞骨格の再編に伴い変化し、より効率の良い神経伝達を図っている。アクチン細胞骨格の再編は、網目状のアクチン線維を形成する Arp2/3や直線上のアクチン線維を形成するフォルミン蛋白質などのアクチン細胞骨格制御因子により制御されている。しかしながら、樹状突起スパインにおける アクチン細胞骨格の制御機構については、未だ十分な理解を得られていない。 申請者らはこれまで「アクチン重合因子Fhod3フォルミン蛋白質」を同定し、Fhod3蛋白質が心臓、腎臓および脳に発現していることを明らかにしている。また、その後の研究によりFhod3は心筋細胞におけるサルコメア形成および機能維持、神経発生時期の神経管形成に必須であることを報告している。当該研究では、まず成獣マウス脳を用いてFhod3の発現および局在解析を行なった。その結果、Fhod3は成獣マウス大脳皮質の特定領域の興奮性錐体神経細胞に発現していた。さらに培養神経細胞を用いて神経細胞内における詳細な局在解析を行なった結果、Fhod3がスパイン内部へ集積していることを明らかにした。さらに、脳特異的Fhod3欠損マウスを用いてスパインの形態およびその割合を詳細に解析したところ、成熟型スパインの数がコントロールに比べて少なく、未成熟なスパインの数がコントロールに比べて多かった。本知見により、Fhod3が大脳皮質における特定の興奮性神経細胞のスパイン形態形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった。本研究成果は、国際誌 Cerebral cortex(査読あり)に掲載された。
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Cerebral Cortex
巻: 31 ページ: 2205-2219
10.1093/cercor/bhaa355
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/pharmacology