研究課題/領域番号 |
18K06706
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研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
酒井 寛泰 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (00328923)
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研究分担者 |
山田 岳史 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50307948)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | シスプラチン / 副作用 / 筋萎縮 / miRNA |
研究実績の概要 |
骨格筋量の減少はがん患者の予後に悪影響を及ぼすことが報告されている。昨年度までに、シスプラチンは骨格筋、血漿サンプル中の多種多様なmiRNA発現に影響を与え、骨格筋および血漿中のエクソソームにおいて共に発現増加するmir-5129-5pなどのmiRNAはシスプラチンによる筋萎縮時の診断マーカーとして有用であることを示唆した。しかし、mir-5129-5pはヒトにおいて存在しないmiRNAだった。そこで、他にシスプラチンの筋萎縮における診断マーカーとして有用なmiRNAを探索した結果、C2C12 myotubes において、シスプラチン処置により濃度依存的に mir-29(a,b およびc)-3p の発現増加及び IGF-1の発現レベルの低下が認められた。mir-29(a,b およびc)-3pは、IGF-1をターゲットとすることが知られている。また、シスプラチン処置により筋委縮原因遺伝子のMuRF1 およびAtrogin-1 が発現増加したが、IGF-1の共処置によりこれらの発現増加を抑制した。さらに、シスプラチン処置によるリン酸化 Akt およびp70S6 kinase の低下は IGF-1 の共処置により抑制された。本研究の結果より、シスプラチン誘発筋委縮時にはmir-29(a,b およびc)-3p 発現増加に伴い、IGF-1発現が減少し、タンパク質合成経路が抑制されていることが明らかとなった。さらに、IGF-1を補充することで筋萎縮が抑制される可能性が考えられた。したがって、骨格筋中のmir-29(a,b およびc)-3p の発現増加もシスプラチンによる筋萎縮時の診断マーカーとして有用である可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シスプラチンを投与したマウスの骨格筋中、血漿中に著明に発現増加を引き起こしたmir-5129-5pはマウス特有でありヒトにおいて存在しないmiRNAということが明らかとなったため、他のターゲットmiRNAの検索に時間を取られてしまった。また、実験/研究時間も新型コロナウイルスによる自粛により短くなってしまったことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度において連携研究者の日本医科大学消化器外科の山田岳史先生よりシスプラチン投薬および非投薬患者の血液を提供していただき、血液中および血漿中エクソソームを単離し、miRNAを抽出し共通に発現変化するmiRNAをprofilingする予定であるが、新型コロナウイルスの影響により、患者血液の実験は中止せざるおえない状況にある。そこで、シスプラチン投与による骨格筋中のmir-29(a,b およびc)-3pの発現増加メカニズムと治療ターゲットの探索をする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬キットを買う予定であったが、残金が不足したため次年度に繰り越すこととした。
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