研究課題/領域番号 |
18K06712
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
高田 芙友子 福岡大学, 薬学部, 准教授 (70412575)
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研究分担者 |
古賀 允久 福岡大学, 薬学部, 准教授 (60570801)
片岡 泰文 福岡大学, 薬学部, 教授 (70136513) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 頭部外傷 / 脳ペリサイト / PDGFRβ |
研究実績の概要 |
頭部外傷後の脳ペリサイト活性化を契機とした段階的な神経制御サブユニット構成細胞(脳ペリサイト・グリア細胞)の変調が、てんかん発症へと導く機構を解明するため、本実験を実施した。これまでの研究により、頭部外傷後、脳ペリサイトのPlatelet Derived Growth Factor Receptor Beta (PDGFRβ)発現上昇が、グリア細胞であるミクログリアおよびアストロサイトの活性化、神経の易興奮性に先行することを明らかにした。さらに頭部外傷による神経易興奮性は、PDGFRβ阻害剤であるイマチニブにより抑制されることを突き止めた。本年度は、頭部外傷後のグリア細胞活性化に脳ペリサイトのPDGFRβ発現上昇が関与するかを検討した。 ミクログリア活性化に対するイマチニブの作用;頭部外傷モデルマウスにイマチニブを投与し、神経易興奮性が認められた頭部外傷後28日目におけるIba1発現(ミクログリア活性化の指標)について評価した。頭部外傷マウスにおけるIba1発現上昇は、イマチニブ投与により有意に抑制された。 アストロサイト活性化に対するイマチニブの作用;頭部外傷モデルマウスにイマチニブを投与し、頭部外傷後28日目におけるGFAP発現(アストロサイト活性化の指標)について評価した。頭部外傷マウスにおけるGlial Fibrillary Acidic Protein (GFAP)発現上昇は、イマチニブ投与により抑制されなかった。すなわち、頭部外傷によるGFAP発現上昇に脳ペリサイトは関与しないことが判った。 以上のことから、頭部外傷後早期に認められる脳ペリサイト活性化に起因したミクログリア活性化がけいれん易発症環境の形成に関与することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳ペリサイトを起点として、段階的にグリア細胞の活性化が誘因されるかを検証することが本年度の目標であった。イマチニブを用いた脳ペリサイト活性化抑制実験により、頭部外傷によるミクログリアの活性化が抑制されたことから、脳ペリサイトが牽引している可能性が示唆された。予定していた実験を実施できたため、本年度はおおむね順調に研究が進展したと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、頭部外傷に起因したアストロサイト活性化に脳ペリサイトが関与するかを検討する。本年度は、アストロサイトの活性化指標としてGlial Fibrillary Acidic Protein (GFAP)を使用したが、イマチニブ投与により変化は認められなかった。脳神経の興奮には、アストロサイトにおけるグルタミン酸取り込みトランスポーターであるGLASTおよびGLT-1が関与する。これらトランスポーターが頭部外傷により変化することが報告されている。そのため、来年度は、活性化脳ペリサイトによるアストロサイトのグルタミン酸取り込み機構に対する影響について着目し、本研究を遂行する予定である。さらに、頭部外傷後早期に認められるPDGFRβの発現上昇機構についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金が2767円となった時点で、使用予定の物品のうち、2767円内で購入できる物がなかった。そのため、来年の研究を遂行するために利用することとした。
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