研究課題/領域番号 |
18K06714
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小松 かつ子 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (50225570)
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研究分担者 |
當銘 一文 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 准教授 (80563981)
朱 シュウ 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (20377360)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ウコン属生薬 / クルクミノイド生合成酵素遺伝子 / 遺伝子多型 / 精油成分 / 抗炎症作用 |
研究実績の概要 |
国内の大学附属薬用植物園などから入手した日本を含むアジア産Curcuma属植物20検体とZingiber zerumbet 3検体、及びミャンマー産Curcuma属生薬2検体を材料にして、葉緑体trnK遺伝子の全領域の配列を決定した後、クルクミノイド生合成酵素遺伝子イントロン長多型(ILPs)の解析を行った。C. longa、C. aromatica (日本)及びC. zanthorrhizaでは、同一種の各検体で原産地の違いにかかわらず同一のtrnK配列及びILPsフラグメントパターンを示した。一方、同じtrnK配列を示したC. longaとC. petiolata、C. zanthorrhizaとC. zedoaria、C. amadaとC. phaeocaulisとの間ではそれぞれILPsパターンが異なり、同属植物の分類におけるILPs解析の有用性が確認された。また、本法は白ウコンと称される健康食品の同定にも応用可能であり、C. petiolataが見出された。その他、インドネシア、タイ、インドなどのCurcuma属生薬26検体のtrnK配列から、C. aeruginosaやC. manggaに由来するとされる生薬は中国のC. phaeocaulisと相同の配列、インドのC. aromaticaに由来するとされる生薬はC. zedoariaと、一方インドのC. zedoariaに由来するとされる生薬は中国のC. kwangsiensis(glタイプ)やC. wenyujinと相同の配列を示すことがわかり、今後ILPs解析を行う予定である。同属生薬の抗炎症作用については、先ずC. longa、C. zedoaria(日本)、C. phaeocaulis及びC. zanthorrhizaに由来する生薬で検討し、C. longaにIL-6の産生抑制作用が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精油成分の分析は、遺伝子解析が終了した検体を用いて行った方が効率的であると考え、今年度は精油成分の抽出方法、GC-MSの条件検討のみを行った。また、生物活性試験は従来行っていない抗炎症作用を調べる系を検討した。したがって、初期の計画よりも若干遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)遺伝子解析:クルクミノイド生合成酵素遺伝子のILPs解析法の改良点がわかったことから、trnK遺伝子の解析が終了した生薬・植物から順次、ILPs解析を進め、樹状図を作成して近縁関係を明らかにする。さらに、各種に固有な配列を見出すことを試みる。 (2)成分分析と多変量解析:trnK配列とクルクミノイド生合成酵素遺伝子のILPsパターンが明らかになった生薬及び植物の根茎について、順次精油成分をGC-MSで分析し、各検体の類似性・相違性を明らかにする。また、HPLC分析で主要な精油成分を定量する。 (3)生物活性試験:抗炎症作用をCOX-2阻害活性、IL-6及びNOの産生抑制活性から検討する。 以上の(1)~(3)の多様性解析研究を推進するため、分担研究者及び担当大学院生との連携を密にする。さらに、対象となるCurcuma属植物標本の入手に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
Curcuma属植物の系統保存を依頼している協力研究機関を訪問する予定であったが、植物の地上部の観察時期を逸してしまったため、次年度訪問することに変更した。そのための旅費150,000円を次年度に繰り越した。旅費以外は、実験補助のための謝金(20,000円)と成分分析のための消耗品(23,732円)として使用する。
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