研究課題/領域番号 |
18K06715
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田浦 太志 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (00301341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルザノール / 生合成 / カレープラント / 二次代謝 / 薬用植物 |
研究実績の概要 |
本研究ではカレープラントが生産する薬理活性成分アルザノールの生合成経路を網羅的に解明することを目的としている。本年度は昨年度同定したプレニル転移酵素HiPTについて詳細な生化学的解析を行った。先ず基質特異性について詳細に検討した結果、組換えHiPTはphloroacetophenone(PAP)にDMAPP由来の dimethylallyl基を転移し、アルザノール生合成前駆体の3-dimethylally PAPを効率的に生成する一方、GPPに対しても極めて弱いながら活性を示し、3-geranyl PAPを生成することを確認した。このような基質特異性の構造基盤について分子モデリングで解析した結果、本酵素はPAPとタイトに結合するとともに、フェノール性水酸基およびカルボニル基と適切に水素結合を形成することを確認した。またDMAPPはマグネシウムイオンを介して活性中心のアスパラギン酸リッチモチーフと相互作用し、反応点間の距離、すなわちDMAPPの1位とPAPの3位の距離は約4.0Åと反応の効率的進行に適していると判断した。一方GPPも受容可能であったが、長鎖のゲラニル基を折りたたむことによって生じる歪みから、反応点間の距離が5.0Å以上となり、本基質に対する低い反応性を支持する結果となった。今回HiPTの立体構造を推定できたことから、部位特異的変異導入による触媒活性コントロールが可能になったと考えられる。なおHiPT2に関しては、至適pH、反応速度定数および植物の部位別発現レベル等の基本的性質についても解明しており、論文化の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度までの検討により、アルザノールの生合成経路を構成するポリケチド合成酵素およびプレニル転移酵素を同定し、キャラクタリゼーションを完了しており、おおむね計画通りの進捗と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はアルザノール生合成経路の最終ステップを触媒する酸化カップリング酵素の同定とキャラクタリゼーションを主たる目的とする。アルザノール生合成経路に予想される酸化カップリング酵素はポリケチド分子間のメチレンを介した炭素-炭素結合を形成するが、このようなメチレンブリッジ形成を触媒する酵素としてFAD結合型オキシダーゼの一種であるベルベリン架橋酵素(BBE)が知られており、アルザノール生合成においてもBBE関連酵素が機能する可能性を考えている。そこで今後は、トランスクリプトーム解析で確認したBBE関連配列について酵母で発現し、酵素活性を確認する計画である。また目的酵素をコードする遺伝子が得られなかった場合には、cDNA発現ライフブラリーの作製及び組換え酵素の網羅的な機能解析に基づく機能発現スクリーニングを検討し、アルザノールの生合成に関わる酸化カップリング酵素遺伝子を同定する。得られた遺伝子のバイオテクノロジーへの活用に関しては、昨年度同定したポリケチド合成酵素を酵母に導入、発現することで、前駆体の投与なしに1g/LレベルのPAPを生産可能なことを確認している。そこで次年度は本組換え酵母にHiPT遺伝子を重複導入し、プレニル化PAPの効率的生産を検討するとともに、得られたプレニル化合物について細胞毒性等の生物活性を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は概ね研究が順調に進行したことから若干の次年度使用額が生じたが、次年度の研究計画は新規酵素の同定を含んでおり、このために必要な研究試薬の購入費用として充当させて頂きたいと考えている。
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