研究課題/領域番号 |
18K06718
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山田 耕史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (00253469)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | チューブリン分子 / 海洋無脊椎動物 / 海綿動物 / 海草 / AChE阻害活性阻害 / H5N1ウイルス増殖抑制 / 抗がん剤 / PC12 |
研究実績の概要 |
がんの治療には、化学療法、外科療法、放射線療法、免疫療法の4種の治療方法が行われている。このうち、化学療法は、広範囲ながん治療の第一選択の治療方法として行われることが多い。すなわち、化学療法は、がんの転移もしくは転移の可能性がある場合や、広範囲に治療が必要な血液やリンパのがんの治療などに取り入れられている。更に、化学療法は、抗がん剤単独で治療を行うこともあるが、実際には、手術治療や放射線治療などの他の治療方法と抗がん剤治療を組み合わせて行うこともある。また、化学療法では、一種類の薬剤だけを使う場合と、多剤併用療法がある。このように、がん治療において、化学療法は広範囲で適用されている。しかし、薬剤耐性がん細胞の出現や薬剤の副作用などのために、薬剤投与量に制限が必要となり、十分な治療効果が得られない場合があることも知られている。従って、がん克服を実現するためには、化学療法で用いられる、より有効な新規抗がん剤を創出することが不可欠である。そのためには、新規抗がん剤開発の鍵となる抗がん物質のシード化合物の創成が求められる。本研究では、海洋無脊椎動物からチューブリン重合・脱重合阻害作用を示す成分を検索し、得られた成分を新規抗がん剤のシード化合物として開発するために、海洋生物の採集と活性成分の分離操作を行った。具体的には、海洋無脊椎動物のスクリーニングと活性成分の抽出・単離を行うことを目的として、①九州西岸海域に豊富に生息している海洋生物の採集を行い、②採集した各試料動物を処理して、粗抽出物を作成し。③第一次活性試験として、各粗抽出物について、神経成長因子共存下で PC12 細胞に対する神経突起伸展作用を調べ、突起の伸展作用を示し、チューブリン機能に影響を与えている可能性を有する抽出物を選出した。④活性を示した抽出物について、活性を指標にしながら、活性成分の分離・精製を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおりに、海洋生物に由来する粗抽出物の作製が進行し、一部は、活性成分の分離精製に写っている。
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今後の研究の推進方策 |
チューブリン重合・脱重合作用の検討と精密構造解析を行うために、①単離した活性成分の作用点がチューブリン/微小管であることを確認するために、第二次活性試験として、ヒト線維肉腫細胞HT1080の細胞質微小管に対する作用を、抗チューブリン抗体を用いた免疫染色法で解析することによって、高感度かつ高い特異性をもって、チューブリン重合・脱重合への作用を確認する。作用を示すことが認められた成分について、各種機器スペクトルデータならびに化学的手法を用いて、化学構造の解明を行う。②構造の明らかになった成分について、さらに詳細(定量的)にチューブリン重合・脱重合への作用を調べる。特に、チューブリンの重合/脱重合に影響を及ぼすことが知られている colchicine、vinblastine や taxol を Positive Control として用い、活性強度を比較し、Control 物質より顕著な活性を示す成分の検索に努める。
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