研究課題
がんの治療には、化学療法、外科療法、放射線療法、免疫療法の4種の治療方法が行われている。このうち、化学療法は、広範囲ながん治療の第一選択の治療方法として行われることが多い。すなわち、化学療法は、がんの転移もしくは転移の可能性がある場合や、広範囲に治療が必要な血液やリンパのがんの治療などに取り入れられている。更に、化学療法は、抗がん剤単独で治療を行うこともあるが、実際には、手術治療や放射線治療などの他の治療方法と抗がん剤治療を組み合わせて行うこともある。また、化学療法では、一種類の薬剤だけを使う場合と、多剤併用療法がある。このように、がん治療において、化学療法は広範囲で適用されている。しかし、薬剤耐性がん細胞の出現や薬剤の副作用などのために、薬剤投与量に制限が必要となり、十分な治療効果が得られない場合があることも知られている。従って、がん克服を実現するためには、化学療法で用いられる、より有効な新規抗がん剤を創出することが不可欠である。そのためには、新規抗がん剤開発の鍵となる抗がん物質のシード化合物の創成が求められる。本研究では、海洋無脊椎動物からチューブリン重合・脱重合阻害作用を示す成分を検索し、得られた成分を新規抗がん剤のシード化合物として開発するために、海洋生物の採集と活性成分の分離操作を行った。具体的には、海洋無脊椎動物のスクリーニングと活性成分の抽出・単離を行うことを目的として、①九州西岸海域に豊富に生息している海洋生物の採集を行い、②採集した各試料動物を処理して、粗抽出物を作成した。③第一次活性試験として、各粗抽出物について、神経成長因子共存下で PC12 細胞に対する神経突起伸展作用を調べ、突起の伸展作用を示し、チューブリン機能に影響を与えている可能性を有する抽出物を選出した。④活性を示した抽出物について、活性を指標にしながら、活性成分の分離・精製を行った。
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