研究課題/領域番号 |
18K06720
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
橋元 誠 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (80552893)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 生合成 / 糸状菌 / 二次代謝産物 / ジオキシゲナーゼ |
研究実績の概要 |
糸状菌Aspergillus japonicus MF275が生産するhimeic acidの生合成研究において、推定生合成中間体であるテトラミン酸を4-ピロンに環拡張する反応を触媒すると予想されるジオキシゲナーゼHimGを見出している。本酵素がさまざまなテトラミン酸を環拡張できるように改変(改変HimG)することで、テトラミン酸を作る酵素遺伝子と改変HimGを組み合わせた4-ピロン類縁体の生物合成システムの構築を目指した。 初めに、二次代謝産物生合成遺伝子解析ツールである2ndFindより予測されたHimG配列から人工遺伝子を作成し、大腸菌中でHisタグ融合HimGを発現させた。その結果、25℃で誘導発現することで、可溶性のタンパク質としてHimGを得ることができた。また、大腸菌で発現させた融合HimGに活性がない場合に備えて、出芽酵母でHimGを発現可能なプラスミドを構築した。本実験は概ね計画通りに進行した。 次に、HimGの基質となるテトラミン酸中間体の供給法を検討した。4-ピロン類縁体を生産させる宿主の検討を兼ねて、麹菌もしくは酵母にテトラミン酸中間体の生成に関与するhimAとhimHを導入し、中間体を生成するかを調べた。本実験は、長いDNA断片のクローニングを伴うことから、酵母の相同組換え能を利用した遺伝子断片の連結法により発現プラスミドを構築した。その後、構築したプラスミドを用いて、himAとhimHをもつ麹菌もしくは酵母形質転換体を作成した。麹菌形質転換体の培養抽出物をHPLC分析した結果、目的とするテトラミン酸中間体の検出には至らなかった。現在、酵母形質転換体の培養抽出物については解析中である。 今年度はHimGの活性検出には至っていないが、テトラミン酸中間体を生成できる宿主は、今後の4-ピロン類縁体の生産に利用できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
大腸菌を用いたHimG誘導タンパクの調製は、概ね計画通りに進行した。 一方、HimGの活性検出に必要な基質供給は、現在のところ達成できていない。その理由として、基質となるテトラミン酸中間体はhimeic acid生産菌の培養物中には蓄積せず、非生産菌などに関連する遺伝子を導入し、生産する必要がある。遺伝子導入に必要なプラスミドは、遺伝子長が12kb(himA)と長い場合や、イントロンが複数ある(himA、himH)ことから、酵母を利用したプラスミド構築(GRC)法で行った。しかし、エクソン部分の連結が予定通し進まず、イントロンを一度で取り除くことができなかった。そのため、プラスミド構築に時間を要したが、現在、酵母形質転換体の作成が完了した。 今後、作成した酵母形質転換体の培養抽出物を分析し、目的のテトラミン酸中間体の生成を確認する。プラスミド構築が遅れることを想定して、麹菌形質転換体による基質供給を試みたが、目的化合物は検出できなかった。このことは、麹菌中では、発現タンパク質もしくはテトラミン酸中間体が不安定で活性の検出に至らなかったことが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、作成したhimAとhimHを持つ酵母形質転換体が目的とするテトラミン酸中間体を生成できるかを調べる。テトラミン酸中間体の供給法を確立後、大腸菌もしくは酵母形質転換体より得たHimGが環拡張反応を触媒するかを調べる。活性がでない場合、HimAとhimHに加えて、himGを持つ形質転換体を作成し、代謝物を調べることでHimGが環拡張反応に関与することを実験的に明らかにする。その後、活性が確認されたHimGの結晶化条件の検討を始める。結晶化が進まない場合は、本学に導入されているタンパク質立体構造シミュレーションソフトMOEを活用することで、活性中心付近の空間に影響を与えるアミノ酸残基について特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の進捗が遅れているため、計画通りに進んだ場合に購入予定であったタンパク質結晶化キットの購入を見合わせた。今年度は、予定している類縁化合物pestalamideの生合成に関与するpst1、pst9、pst8遺伝子のクローニング試薬、遺伝子点変異に必要なPCR試薬を購入するとともに、活性のあるタンパク質が得られた段階でタンパク結晶化キットを購入する。
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