糸状菌Aspergillus japonicus MF275が生産するhimeic acidの生合成研究において、生合成遺伝子に関与する遺伝子クラスターを同定している。現在のところ、その生合成はHimAとHimHによりテトラミン酸中間体が生成された後、HimGによりテトラミン酸から4-ピロンへの環拡張反応が起こり、最後にHimCにより側鎖が酸化されると予想している。テトラミン酸の環拡張反応の解明を目指すため、ジオキシゲナーゼと相同性を示すHimGについて解析を進めている。一昨年度よりHimGの推定基質と考えられるテトラミン酸について、麹菌および酵母形質転換体を用いて基質供給を試みている。また、himAと同様な機能を持ち、pestalamideの生合成に関与するpst1をクローニングし、麹菌形質転換体の作成を試みた。複数回にわたり導入を試みたが、himAもしくはpst1が導入された形質転換体の取得には至らなかった。酵母形質転換体ではhimAとhimHを含む酵母形質転換体の代謝物解析から、生成物が不安定である可能性を考慮して、himeic acidを生成する形質転換体の作製を試みた。himAとhimHに加え、酵母のコドンに最適化したhimGとhimCを導入し、その形質転換体の培養物の分析を行ったが、himeic acidの生成は確認できなかった。 基質の供給と並行して、HimGおよびHimCのモデリング解析を行った。HimクラスターにはジオキシゲナーゼであるhimGとともにシトクロムP450と相同性を持つhimCが存在する。HimCの相同性検索から、HimCによる環拡張も示唆されたため、PDBに登録されているジオキシゲナーゼ(HimGと相同性)およびシトクロムP450(HimC)について計算化学ソフトを利用して立体構造を予測した。
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