研究課題/領域番号 |
18K06721
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
成川 佑次 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 講師 (50348611)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 漢方処方 / 脂肪細胞分化 / 五苓散 |
研究実績の概要 |
生薬の組み合わせからなる漢方処方の生薬間相互作用の解明を目的として、当該年度では特に苓朮剤(ビャクジュツまたはソウジュツとブクリョウの組み合わせからなる処方群)における脂肪細胞分化への影響に関する研究を中心に行った。 先行研究においてビャクジュツ抽出物がマウス線維芽細胞株3T3-L1の脂肪細胞分化の指標である脂肪滴生成を促進することを見出していることから、類似生薬であるソウジュツに関しても検討を行った。その結果、ソウジュツではむしろ脂肪滴の生成を抑制する傾向にあることが明らかとなった。このことは補剤として性質があるビャクジュツと瀉剤としての性質があるソウジュツの違いにつながる可能性がある。今後、そのメカニズムの解明を行っていく予定である。 また、代表的な苓朮剤である五苓散(ブクリョウ、ソウジュツ、タクシャ、チョレイ、ケイヒ)の散剤を試料としてn-ヘキサン、酢酸エチル、メタノール、水を溶媒として順次、抽出を行い、各種抽出物を調製し、脂肪滴の生成及び培地中のグルコース消費量を測定したところ、n-ヘキサン抽出物は細胞毒性を示さない濃度で脂肪滴の生成を抑制し、培地中のグルコース消費量も減少した。そこで、五苓散のn-ヘキサン抽出物に含まれる成分を分析したところ、タクシャに由来するアリソールAおよびB、ソウジュツに由来するβ-オイデスモールの存在が確認された。アリソールAおよびBについて脂肪細胞分化を確認したところ、アリソールBは顕著な抑制活性を示した。現在、五苓散構成生薬の中でタクシャが重要であることが示唆され、他の生薬成分との相互作用について更に検討を行っていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
苓朮剤における脂肪細胞分化に対する影響に関しては先行研究において使用していた3T3-L1細胞の継代数が増え、分化能が悪くなってきたことから、各種細胞バンクより新たに購入したが、細胞の増殖と分化刺激後の変化が安定するまでに多くの時間を要した。 桔梗湯関連処方の気道炎症抑制活性の解析に関しては、キキョウに含まれるサポニン成分のBEAS-2B細胞に対する細胞毒性が強く、活性評価において至適濃度の検討が困難であった。また、カリキュラム改定に伴い、研究人員の変化と教育に関連する時間の増加によって研究の進捗に遅延が生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
苓朮剤における脂肪細胞分化に対する影響に関しては研究計画では苓朮剤ということでブクリョウとビャクジュツ、ソウジュツの組み合わせに着目していたが、これまでの研究を踏まえ、代表的な処方である五苓散の構成生薬(ブクリョウ、ビャクジュツまたはソウジュツ、タクシャ、チョレイ、ケイヒ)の組み合わせに範囲を広げ、検討を行う予定である。特に2つの朮類生薬(ビャクジュツ、ソウジュツ)の違いによる活性の変化を生薬の組み合わせ及び漢方処方のレベルで検討する。 桔梗湯関連処方の気道炎症抑制活性に関してはキキョウサポニンによる細胞毒性が問題となっているが、細胞によって感受性が異なる可能性があるので別の細胞を用いての評価を行うことも視野にいれて検討を行う。
|