本研究では、スギ花粉症の発生要因となるタンパク質性アレルゲン以外に免疫応答を刺激する物質,特に自然免疫系の活性化に関わる成分を解析するために、スギ花粉に含まれる病原体関連分子パターン物質(PAMPs:pathogen-associated molecular patterns)を単離し、その構造や物性、自然免疫系細胞の活性化機構を明らかにすること目的に検討を進めた。 本年度は①スギ花粉から分離した糖鎖成分のレクチン等の糖鎖結合タンパク質との反応性、②花粉分画の多糖分解酵素処理とDectin-1反応性を検討し、Dectin-1発現細胞への花粉画分の影響をin vitroで解析した。①の研究成果:乾燥スギ花粉から水溶性糖鎖画分を得て、前年度に確立した(1→3)-β-D-グルカン(以下BG)の定量法に従い、BG含量を測定した。さらに、水不溶性画分をジメチルスルフォキシド(DMSO)で抽出したDMSO可溶性画分をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で溶解し同様にBG含量を測定した。水溶性及びDMSO可溶性画分のBG量はDMSO可溶性画分の方が高いBG含量を示した。レクチン及び多糖結合性タンパク質の反応性から花粉BGの構造解析を行った結果、花粉BGは真菌の細胞壁BGとは異なり、(1→6)-分岐型構造はほとんどなく、直鎖状(1→3)-β-D-グルカンであることが明らかとなった。②の研究成果:花粉画分の(1→3)-β-D-グルカナーゼ処理を行い、可溶性Dectin-1-Fcタンパク質プローブとの反応性を検討したグルカナーゼ処理でDectin-1-Fcとの結合活性が消失した。 さらにDectin-1発現細胞として樹状細胞または単球系白血病細胞のDectin-1トランスフェクタントを得て、花粉成分による活性化を検討したところDectin-1との結合に依存することが明らかとなった。 以上の検討より、花粉の分画物の多糖構造の推定と自然免疫活性におけるBG及びDectin-1依存性が明らかとなった。次年度はDectin-1の結合阻害及びBG除去花粉分画による花粉症発症への影響を検討する予定である。
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