研究課題/領域番号 |
18K06724
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
小池 一男 東邦大学, 薬学部, 教授 (30130363)
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研究分担者 |
李 巍 東邦大学, 薬学部, 准教授 (90328633)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 認知症 / 漢方薬 / BPSD |
研究実績の概要 |
高齢化社会に伴う認知症患者が急速に増加する一方で、根本的な認知症治療法はない。また、認知症患者の生活の質を著しく低下する行動・心理的な周辺症状(BPSD)に対する有効な臨床対応法の確立も急務となっている。本研究では、妄想、徘徊、不安、焦燥、うつ状態、せん妄、暴力行為といった認知症のBPSDに着目して、漢方薬の有用性を基礎科学的なアプローチにより明らかにすることを研究目的とした。 認知症モデルマウスとして、①急性認知症モデル:スコポラミン誘発記憶障害モデルマウス、②亜急性認知症モデル:アミロイドβ1-42の脳室内処置モデル、③慢性認知症モデルマウス:アミロイド前駆体タンパク質(APP)の過剰発現マウスが広く利用されているが、急性認知症モデルに対する漢方薬の改善効果を今年度に検討した。 スコポラミンのICR系マウスに対する腹腔内投与(2 mg/kg)は、Y字迷路試験および新奇物質探索試験において、有意な認知機能の低下を誘発した。また、強制水泳試験における不動時間の顕著な短縮、オープンフィールド試験における自発運動量の有意な増加が観察されたことから、スコポラミンの投与により興奮に伴うBPSDが同時に発現した。 まず五苓散を研究の対象に選んだ。スコポラミン投与マウスに対して五苓散の投与は、Y字迷路試験および新奇物質探索試験おける認知機能の低下を有意に改善し、さらに、オープンフィールド試験における自発運動量の増加に対する鎮静効果も観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知機能の低下を評価するための実験系として、Y字迷路試験および新奇物質探索試験を構築し、またBPSDを解析するために、高架式十字迷路試験、強制水泳試験、オープンフィールド試験を用いた多彩な行動薬理学的手法により、スコポラミン投与マウスにおける行動異常を解析することが出来た。さらに、漢方薬として脳神経疾患に対して効果が期待されている五苓散の評価を行った結果、有意な認知機能低下の改善作用と共に、五苓散がBPSDとして興奮に伴う行動に対する鎮静作用を示すことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、認知症モデルマウスとして亜急性認知症モデルである、アミロイドβ1-42の脳室内処置マウスを用いた作用解析を行う。アミロイドβは脳に蓄積・凝集し、その結果発生する多量の活性酸素が脳の神経細胞を破壊し、認知症が発症するとされる。五苓散および、これまでに見出した高い抗酸化活性を示す漢方薬に関して、アミロイドβ処置マウスに対する認知機能低下に対する改善作用、BPSDに対する改善効果を解析することで、さらなる基礎科学的なデータの集積を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデル動物の作製のために利用していたマウス数は当初予定より少ない数でできたため、次年度使用額が生じた。 次年度において、漢方薬の薬効評価の実験に使用する予定である。
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