研究実績の概要 |
昨年度までに合成した21種類の1,5-annhydro-D-glucitol(1,5-AG)誘導体の合成と生物活性に関する研究結果について、論文報告をおこなった。本年度は、1,5-AG以外の環状ポリオールとして、すでに昨年度グラムスケールで大量合成に成功している5種の環状ポリオール、1,5-anhydro-D-galactitol(1,5-AGal), 1,5-anhydro-D-mannitol(1,5-AMan), 1,5-anhydro-xylitol(1,5-AXyl), 1,5-anhydro-L-rhamnitol(1,5-ARha), 1,5-anhydro-L-fucitol(1,5-AFuc)に着目し、構造活性相関の検討を試みた。 誘導体合成においては、アルコールと没食子酸の縮合試薬に向山試薬(2-Chloro-1-methylpyridinium Iodide)を用いることで、環状ポリオール類の効率的per-galloyl化に成功し、さらなる化合物ライブラリーの拡充および構築をおこなうことができた。本年度あらたに合成した環状ポリオール誘導体のα-グルコシダーゼ活性及び抗酸化活性について検討をおこなったところ、興味深いことに、1,5-AG, 1,5-AGal, 1,5-AManのそれぞれの誘導体の活性には顕著な差が認められなかった。すなわち、ヒドロキシ基の立体配置は活性に影響を与えないことが明らかとなった。この結果が何に基づくものなのか、その要因を次年度以降明らかにしていきたい。6-デオキシ糖(1,5-ARha, 1,5-AFuc)の誘導体については、galloyl基の数が減少したことにより、予想通り生物活性も減弱した。 また、本研究によりこれまで合成された環状ポリオール誘導体のいくつかには、脂肪細胞分化に影響を与える作用があることが明らかになりつつあり、その作用機序を含め、詳細については現在検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に着目した5種の環状ポリオール、1,5-anhydro-D-galactitol,1,5-anhydro-D-mannitol,1,5-anhydro-xylitol,1,5-anhydro-L-rhamnitol,1,5-anhydro-L-fuciitolは、いずれもグラムスケールで昨年度中に大量合成に成功しており、また、縮合試薬として向山試薬(2-Chloro-1-methylpyridinium Iodide)を用いるとper-galloyl化の反応が効率良くいくことを見出すことができたので、それに伴う消耗品費(ガラス器具、合成用試薬、溶媒)の支出が計上したものよりも少なかった。次年度は、消耗品費(合成用試薬、溶媒、生物活性評価用試薬・器具)及び研究報告のための学会参加旅費としての使用を計画している。
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