研究課題/領域番号 |
18K06726
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
森川 敏生 近畿大学, 薬学総合研究所, 教授 (10340449)
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研究分担者 |
二宮 清文 近畿大学, 薬学総合研究所, 准教授 (10434862)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖および脂質代謝改善効果 / Salacia chinensis / neokotalanol / カンカニクジュヨウ / echinacoside / acteoside / helichrysoside |
研究実績の概要 |
伝統・伝承医薬学において薬用に供される天然資源のなかで,食用資源としても利用される素材から,糖および脂質代謝改善効果を有する機能性成分を探索する.すなわち,内臓脂肪蓄積を成因基盤とする糖尿病あるいは脂質異常症の予防およびそれらの初期症状の緩和に効果のある食用資源を探索し,その活性寄与成分を明らかにするなどの科学的評価を実施,エビデンスに基づいた新たな機能性食品あるいは植物性医薬品の候補素材の提案・開発を実践する.加えて,見いだした活性寄与成分をテンプレート(医薬シーズ)として,その全合成および類縁体合成・評価を実施し,新たな医薬候補物質の創製をめざす.すなわち本研究は,『薬』・『食』両面からのアプローチによる国民の健康寿命の延伸に資する食用資源の科学的評価を実施することを目的とする. このような背景のもと,今年度は,食後過血糖に対する血糖上昇抑制効果を有するアールユヴェーダ生薬のサラシア (Salacia chinensis) の熱水抽出エキスおよびその特徴成分で,顕著なα-グルコシダーゼ阻害活性を示す neokotalanol について,肥満を伴う2型糖尿病モデル動物である ob/ob マウスを用いた HbA1cの上昇抑制作用を見いだした.また,砂漠人参と称されるカンカニクジュヨウの抽出エキスに耐糖能改善作用を見いだし,その活性寄与成分がアシル化フェニルエタノイド配糖体である echinacoside や acteoside であることを明らかにした.加えて,天然由来アシル化フラボノール配糖体である helichrysoside に,肝細胞における中性脂肪の蓄積抑制活性や代謝促進活性を有することを明らかにするとともに,各種類縁化合物を合成し,その構造活性相関に関する知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事業2年目である本年度は,天然資源からの医薬シーズ探索研究の実施で培ったノウハウを生かし,国内外の食用資源から調製した抽出エキスライブラリーについて,糖および脂質代謝改善効果を指標として各種 in vivo および in vitro 評価試験を実施するとともに,ピックアップされた有望素材について,生物活性を指標に分離・精製し,NMRをはじめとする各種スペクトルの解析から活性寄与成分および新規化合物の構造解析などの実施を予定していた.加えて,見いだした活性寄与成分の全合成および類縁体ライブラリーの合成研究についても着手の予定であった. 本年度の成果として,食後過血糖に対する血糖上昇抑制効果を有するアールユヴェーダ生薬のサラシア (Salacia chinensis) の特徴成分である neokotalanol のob/obマウスに対するHbA1c上昇抑制作用を見いだすなど,新たなエビデンスの蓄積に資する成果が得られた.また,糖および脂質代謝改善効果を有する新たな天然由来成分の候補物質として, echinacoside や acteoside などのアシル化フェニルエタノイド配糖体に耐糖能改善作用を見いだすとともに,アシル化フラボノール配糖体の helichrysoside に脂質代謝改善作用を見いだすなど,当初計画をおおむね順調に進展しているものと判断できる成果を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
事業開始当初より継続して実施しているが,各種評価試験による有望素材を選定するとともに,ピックアップされた有望素材について,生物活性を指標に分離・精製し,NMRをはじめとする各種スペクトルの解析から活性寄与成分および新規化合物の構造解析などすすめるとともに,見いだした活性寄与成分の全合成および類縁体ライブラリーの合成研究およびタンパクレベルおよび遺伝子レベルでの活性寄与成分の作用メカニズム解析の実施を予定している.これらの検討を複数の素材について同時並行で研究をすすめることで,切れ目のない研究成果のアウトプットが見込めるようにし,もって,エビデンスに基づいた新たな機能性食品あるいは植物性医薬品の候補素材の提案・開発へと繋げたい.
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