研究課題/領域番号 |
18K06728
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
當銘 一文 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (80563981)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | NMR / 成分プロファイリング / 生薬 / 和漢薬 / ボウフウ |
研究実績の概要 |
本研究では多数の成分から構成される和漢薬の包括的な理解をめざし,従来から解析されていた和漢薬のHPLC法による成分プロファリングを行うとともに,NMRによる成分プロファイリングの導入を目指した. 本年度は,特にボウフウについて研究を進めた. 生薬ボウフウの新たな資源として期待されるモンゴル産のSaposhnikovia divaricata の根の品質評価のため,昨年度定量NMR法により純度を決定した試料を標準試料として用いることで,クロモン成分9 種及びクマリン成分4種のHPLC-DAD 法による定量分析法を確立した.本法を,モンゴル産のS. divaricata の根に適用した結果,prim-O-glucosylcimifugin (1) 及び4’-O-β-D-glucosyl-5-O-methylvisamminol (2)は,すべての試料において検出され,JP17 及び中国薬典の規格を満たしていることがわかった.HPLCのピーク面積に基づいて多変量解析を行い,地域差を検討したところ,クロモン類の含量は地域間差に大きく寄与することがわかった.特にモンゴルの北東部において1 及び2 の含量が高いことがわかったことから,同地はボウフウの栽培地として期待された.また,研究の過程で見出した未同定のマーカー化合物については,実際に単離精製を行い,NMR などの機器分析による構造解析を行った結果,新規のマロニル化hamaudol 配糖体であることを明らかにした. 本研究で研究を進めている定量NMRについては,申請時に計画していなかった生薬についても研究展開を行っている.特に車前子から見出したパクリタキセル誘発アロディニア作用を持つイリドイド成分については,活性成分を含む画分,精製した化合物について定量NMRを適用し,その純度を明らかにしたうえで動物実験を行うことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は計画を一部変更して主にボウフウについて研究を進めた.ボウフウについて計画していた内容については,ほぼ完了することができた.また,本年度に論文1報が採択されており,さらに現在もう1報を投稿中である. コツサイホに関する研究については本年度に十分行うことはできなかったが,次年度に集中して実施する. 本研究課題で進めている定量NMRについては,当初計画していなかった生薬についても研究を展開することができており,本研究の波及効果が得られており,論文化にもつながっている. 以上のことからおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い研究を遂行する.とくに本年度未達成であったコツサイホのNMR法による成分プロファイリングを進め,着実に計画を達成する.また,定量NMR法,NMR法による成分プロファイリングについては積極的に他の生薬にも応用を進め,これら手法の妥当性を検証するとともに,問題点を見つけ出し,手法の改善につなげる.
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度までに購入していた試薬,溶媒等を使用することで研究を進めることができたため,使い切りを行わず,物品費の一部を次年度に繰り越しすることとしたため.
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