難治性疾患のひとつである成人T細胞白血病(ATL)の治療のために、これまでの抗がん剤と異なる作用メカニズムで、かつ薬剤耐性を克服しうる新規抗がん剤の開発が求められている。最近、我々はジャマイカ産シソ科植物から薬剤耐性克服活性をもつ新規抗がん剤ヒプトシドを発見した。本研究は、ヒプトシドの探索過程で用いた手法を用いて薬用植物および海洋無脊椎動物の中からATLに対する新規リード化合物を開発することを目的とする。 厳しい生存競争の中で、植物や海洋無脊椎動物は化学的防御手段の一つとして忌避物質や誘引物質などの二次代謝産物を蓄えているといわれている。それらの二次代謝産物の中には特異な化学構造や生物活性を有しているモノが多数含まれており,全く新しい作用機序を示す抗ATL治療薬や抗がん剤が得られる可能性が高い。 国内産およびマレーシア産の海洋無脊椎動物や植物について、メタノール抽出後、二層分配や各種クロマトグラフィーを駆使することで、ヒプトシドとは異なる炭素骨格を有する41種の抗ATL化合物を単離し、主に核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて化学構造を明らかにした。そのうち、8種類が新規化合物であり、今後、構造活性相関研究や作用機序を明らかにしていく。 本研究によって、ATLのみならず、多くの癌の治療方法が改善されること、また、多剤耐性を克服しうる多くの薬剤が開発されることを期待する。
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