研究課題/領域番号 |
18K06733
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
浅見 行弘 北里大学, 感染制御科学府, 教授 (70391844)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 微生物培養液 / スクリーニング / メロペネム / 耐性克服活性 |
研究実績の概要 |
2019年度は、連携研究者によって調製・供給された糸状菌ならびに放線菌培養物のおよそ3,000検体の微生物培養液サンプルを用いてスクリーニングを行った。すなわち、IMP型メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害物質のスクリーニングを簡便に行う方法として、カルバペネム系のMEPMと共存しているときに阻止円径の大きくなる物質のアッセイ系を独自に構築し、微生物培養液からのスクリーニングを開始した。スクリーニングは以下の一次から三次までを行った。一次スクリーニングとしてMEPM含有培地上で阻止円が確認された検体、二次スクリーニングとしてMEPM含有、非含有培地で選択性が確認できた検体、そして三次スクリーニングとしてMBL阻害活性が確認できた検体。その結果、強いMEPM耐性克服活性を示し再現性のあった2検体の培養液を選抜した。この2検体について再培養後、活性物質生産が再現されることを確認した結果、沖縄土壌由来放線菌のOK19-0025株および糸状菌FKR-0558株培養液にMEPM耐性克服活性を示した。しかしながら、活性物質生産の再現性に乏しく、MEPM耐性克服活性物質の取得には至らなかった。そこで、これまで申請者らによってMEPM耐性克服活性物質として糸状菌より見出された3Z,5E-Octa-3,5-diene-1,3,4-tricarboxylic acid 3,4-anhydrideの誘導体合成とその活性評価を連携研究者らと実施した。カルボン酸をメチル化した3Z,5E-Octa-3,5-diene-1,3,4-tricarboxylic acid 3,4-anhydrideは、より高活性であることをすでに明らかにしている。そこで、より高活性で、且つIMP型MBL産生緑膿菌にも効果のあるMBL阻害剤を得るために各種誘導体を合成し、MEPM耐性克服活性とMBL酵素阻害活性を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は3,000検体の微生物培養液サンプルを用いてスクリーニングを行った。MEPM耐性克服活性を示した2検体の培養液を選抜できた。沖縄土壌由来放線菌のOK19-0025株および糸状菌FKR-0558株培養液検体を精製対象候補検体として選抜した。しかしながら、活性物質生産の再現性に乏しく、MEPM耐性克服活性物質の取得には至らなかった。そこで、これまで申請者らによってMEPM耐性克服活性物質として糸状菌より見出された3Z,5E-Octa-3,5-diene-1,3,4-tricarboxylic acid 3,4-anhydrideの誘導体合成とその活性評価を連携研究者らと実施した。これまでに、3Z,5E-Octa-3,5-diene-1,3,4-tricarboxylic acid 3,4-anhydrideの誘導体を45化合物合成し、メロペネム耐性克服活性ならびに、IMP型MBL活性を連携研究者らと評価した。IMP型MBLが発現している緑膿菌に対しても良好な耐性克服活性を示した。IMP型MBL阻害活性は、180倍程度の高活性化を示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後もIMP型メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害物質のスクリーニングを簡便に行う方法として、カルバペネム系のMEPMと共存しているときに阻止円径の大きくなる物質のアッセイ系を独自に構築し、微生物培養液からのスクリーニングを用いる。連携研究者が分離したIMP型MBLが発現している臨床分離大腸菌株を検定菌として用いる本スクリーニングは有用であると考えられる。 さらに、連携研究者によって調製・供給される糸状菌ならびに放線菌の微生物培養液サンプルを用いて、メロペネム耐性克服活性を有する微生物培養液の選抜を2020年度も引き続いて行う。選抜された微生物培養液についてMEPM耐性克服活性物質を単離・構造解析後に、in vitroでMEPMを不活性化する酵素であIMP型MBL阻害活性試験を実施し、その阻害活性能を検証する。2019年度に選抜されたが、活性物質の取得に至らなかった放線菌OK19-0025株および糸状菌FKR-0558株培養液からは、その活性物質の取得を試みる。一方、引き続き、3Z,5E-Octa-3,5-diene-1,3,4-tricarboxylic acid 3,4-anhydrideの誘導体合成ならびにその活性評価を連携研究者らと実施する。得られた活性物質については、各種検定菌によるMEPM耐性克服活性、IMP型MBL阻害活性の詳細な検討およびMEPM併用時におけるMEPM耐性菌の抗菌スペクトルを測定する。これらの試験によって優れた活性を示した活性物質については、連携研究者らによるMEPMを併用したマウス感染モデル系での治療効果の検証を試みる。
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