研究実績の概要 |
メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)阻害活性により、メロペネム耐性克服を示す生物活性物質のスクリーニングにより糸状菌Paecilomyces sp. FKI-6801株からIMP-1型MBLに対して選択的な阻害活性を示す3Z,5E-octa-3,5-diene-1,3,4-tricarboxylic acid 3,4-anhydride(ODTAA)を見出して来た。ODTAAの生物学的な特異性に着目し、その構造活性相関研究を行うべく、連携研究者らにより種々の誘導体合成がなされた。加えて、その誘導体に関して、MBL阻害活性を評価した。 連携研究者らの研究室で確立したODTAAの全合成経路を用いて種々の誘導体を合成し、MBL阻害活性を評価したところ、ODTAAが有する無水マレイン酸骨格はジカルボキシラート骨格との平衡にあることが示唆された。そこで我々は、より安定な化学構造としてアミドの導入を検討することとした。3-furanmethanolから調製した化合物1を鈴木・宮浦カップリングにより化合物2へと合成し、続いてWittig反応を行うことで側鎖を導入した。得られた化合物3に対する光延反応によりアミンを導入した化合物4を合成し、光酸化を行うことで無水マレイン酸骨格の化合物5を構築した。最後に、塩基による分子内環化を行うことでラクタム誘導体の合成を達成した。合成した誘導体のうち、特に10員環ラクタム誘導体が高いMBL阻害活性を示すことを見出した。
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