研究実績の概要 |
煙草煙や加熱食品に含まれるベンゾ(a)ピレン(BaP)は、DNA付加体形成による遺伝子毒性の要因となる発がん物質である。BaP DNA付加体形成の主成分は7,8-diol-9,10-epoxy BaP (BPDE)であり、BaPが誘導するCYP1A1が主要酵素であると言われてきたが、我々のCyp1a1遺伝子欠損マウスの結果は、CYP1A1以外の酵素の存在を示した。だが分子の同定には至っていない。そこで本研究では、BaP DNA付加体形成の新しいメカニズムを解明することを目的とした。現在最も感度が高いDNA付加体検出法は、32Pポストラベル法であるが、時間とコストがかかる。そこで光センシングシステムの導波モードセンサーを利用した新たな簡便かつ迅速なBPDEのDNA付加体検出法を確立した。サンドイッチELISA法と導波モードセンサーを組み合わせることで、通常のELISA法では検出できなかったBaP処理したマウス肝臓および培養細胞のBPDE DNA付加体の検出が可能になった。現在、多検体測定のためのマルチチャンネル型の導波モードセンサーの開発を行っている。BaP DNA付加体形成メカニズムを解明するために、Cyp1a1遺伝子欠損マウス胎児線維芽細胞、各種ヒト培養細胞における各種阻害剤によるBaP DNA付加体量、BaP代謝物の検討から、9,10-epoxy反応に新規分子が関与していることが示された。現在ノックダウン細胞による分子の最終確認を行っており、早急に報告したいと考えている。ファイトケミカルによる予防法に注目し抗がん作用があるニンニク成分ジアリルトリスルフィドのBaP DNA付加体形成への影響を検討した。ヒト肝癌細胞株においてBaP DNA付加体は増加し、ニンニク成分がBaP代謝に影響を及ぼすことが示された。ファイトケミカルによるDNA付加体形成予防の可能性が示唆された。
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