研究課題/領域番号 |
18K06739
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
二宮 清文 近畿大学, 薬学総合研究所, 准教授 (10434862)
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研究分担者 |
森川 敏生 近畿大学, 薬学総合研究所, 教授 (10340449)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インスリン / 筋肉 / L6 / メース / センキュウ |
研究実績の概要 |
伝承・伝統医薬学において薬用に供される生薬,ならびに主に食用に供される植物を素材として,本課題のインスリン様作用を有する物質を探索した.糖尿病の薬物治療においては,「糖尿病治療ガイド」に記載されているように,生活習慣の改善が指導されるとともに,種々の医薬品が血糖値の制御を目的に使用されている.しかしながら,血糖値の制御が既存の医薬品により十分に出来ない場合には,インスリン製剤が使用されることになる.即ち,現状において使用可能な薬剤の中で,最も強力な血糖値の低減が期待出来る方法は,インスリンと同じくインスリン受容体へのアゴニスト作用であることがわかる.しかしながら,インスリンはペプチドからなる分子構造を有することから経口投与ではバイオアベイラビリティが低く,患者による自己注射が必要な製剤として提供されている. 本研究課題では,前記した生薬や食用に供される植物由来の成分,特に中,低分子量の含有成分を中心にインスリンと同様の薬理活性を示す成分をひろく探索した.その結果,生薬センキュウおよびニクズクイ抽出エキスが,インスリンと同様,筋芽細胞である L6 細胞の糖消費を有意に亢進させることを見いだした.さらにこれらの含有成分についても評価を進めた結果,それぞれの含有成分から活性寄与成分を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
L6 細胞を使用して,植物抽出エキスによる L6 細胞の培養液中糖消費促進活性を検討した.スクリーニング試験を実施した結果,生薬センキュウおよびニクズクイなどの抽出エキスにインスリン様の糖消費促進活性を認めた.これらの抽出エキスは,インスリンの細胞内シグナルトランスダクションの阻害剤であるウォルトマンニン共存下でも,その活性が消失することはなく,インスリンと全く同じ経路を介して,細胞に糖消費の亢進を惹起するわけではないことが,現状の結果からは示唆されている.さらに,活性成分として得られた化合物は抽出エキスの薬理活性の特徴を再現することが確認出来ており,本課題の当初目的とした,「薬物により制御可能な新規糖消費促進機構」の解明に繋がる実験結果であると判断出来ることから,当初の計画よりもスムーズに研究が進行しているものと判断出来る.
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今後の研究の推進方策 |
2年目以後の本研究課題の推進方策としては,さらに種々の素材についてスクリーニング試験を拡充し,より活性の強い素材,さらにはその活性寄与成分の解明研究を推進する.一方,1年目の研究の成果として得たセンキュウやニクズクイの抽出エキスの in vivo での評価をすすめるとともに,その作用機序解析に着手する. 作用機序解析について具体的には,インスリンにより惹起される細胞内シグナルトランスダクションを対照として,インスリンと同一の機序による部分とインスリンとは異なる部分をウエスタンブロット等により,解析を進めていく.
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