4年間の研究計画の内,4年目が終了した.これまでの研究成果として,種々のハーブおよび生薬から調製した抽出エキスに,当該研究課題の目的であるインスリン様の糖消費亢進作用を見出している.これまでに得られた成果の中では,特にニクズク科植物 ニクズク (Myristica fragrans Houtt.) の仮種皮であるメースから得た抽出エキスに強力な糖消費亢進作用を見出すとともに,本抽出エキスに含まれる活性寄与成分の一つを,報告者らのグループで新規化合物として単離・構造決定した maceneolignan A を見出したことである.さらに,本化合物はインスリン共存下での実験条件では,インスリンとの相加作用を示すことを明らかにした.また,インスリンの細胞内シグナル伝達の阻害剤であるwortmannin 共存下での実験では,同条件でインスリンにより惹起される細胞の糖消費の亢進は完全に消失するのに対し,maceneolignan A の活性は影響を受けないことなどを見出した.本実験結果から,maceneolignan A は,インスリン受容体を介さない経路により細胞に対して糖消費を亢進させていることが示唆される.従って,インスリン抵抗性の形成によりインスリン作用が不足しているヒトに対する薬剤のシード化合物としても有用な性質を有する化合物であると考えられた.本年度での研究では,各種植物抽出エキスのインスリン様糖消費更新活性を,さらに幅広く実施し,サンショウ(果皮),ジャスミン(花部)などに有意な糖消費更新活性を見出した.このうち,サンショウの成果については,2022年3月に開催された日本薬学会年会において報告するに至った.
|