研究課題/領域番号 |
18K06742
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山口 浩明 東北大学, 大学病院, 准教授 (80400373)
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研究分担者 |
阿部 高明 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80292209)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | トランスポーター / 腎排泄 / OATP4C1 / 相互作用 |
研究実績の概要 |
有機アニオントランスポーターOATP4C1は、ヒトにおいて腎臓で機能している唯一のOATPファミリーのメンバーであり、臨床で使用されている薬物の腎排泄に関与している可能性が大きい。平成30年度は、OATP4C1の安定発現発現細胞株を用いた特異的阻害薬および新規輸送基質の探索を行った。まず、これまでの我々の報告(J. Pharmacol. Exp. Ther., 362:271-277, 2017)にて、OATP4C1と強く相互作用したHIVプロテアーゼ阻害薬およびキノロン系抗菌薬について、検討する化合物の種類を増やし、阻害強度について検討した。 検討したHIVプロテアーゼ阻害薬6種(ロピナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、サキナビル、リトナビル、ダルナビル)のうち、ロピナビル、サキナビル、リトナビルはOATP4C1輸送に対し濃度依存的な阻害効果を示し、IC50値はサキナビル<リトナビル<ロピナビルであった。その他の化合物の阻害効果は弱いものであった。 また、キノロン系抗菌薬3種(レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ノルフロキサシん)について検討し、いずれもOATP4C1輸送を濃度依存的に阻害し、阻害の強さはノルフロキサシ<レボフロキサシン=シプロフロキサシンであった。 続いて、リトナビルおよびサキナビルについて、OATP4C1の輸送基質になるか検討したところ、これらの化合物がOATP4C1の新規輸送基質となることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
OATP4C1と相互作用する一部の化合物について、OATP4C1安定発現細胞株を用いた輸送実験を行ったところ、HIVプロテアーゼ阻害薬のritonavirとsaquinavirがOATP4C1の新規輸送基質であること明らかにした。その他の化合物についても検討を進めているところであるが、今後も新たなOATP4C1基質が見出されることが期待される。SLCO4C1トランスジェニックラットを用いたin vivo実験で評価可能な輸送基質が見つかり次第、in vivo実験を実施する。新規輸送基質の探索が予定通りに進んでいることから、おおむね順調に研究が進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、OATP4C1発現細胞を用いて特異的阻害薬および新規輸送基質の探索を行う。併せて、SLCO4C1トランスジェニックラットを用いて、基質化合物の薬物動態におけるOATP4C1の役割を明らかにするため、SLCO4C1トランスジェニックラットと正常ラットの比較検討を行う。まず、基質化合物急速静注後の腎取り込みクリアランスを評価することを予定している。さらに、基質化合物の全身クリアランスの変動を解析予定である。
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