研究実績の概要 |
膜輸送体OCT1とOCT3は、metforminやimatinib等の基質薬を輸送し体内動態に関与する一方で、OCT3は、冠動脈疾患や大腸がん等の疾患と関連する。OCT1/OCT3の輸送機能は、先天的・後天的な要因で個人差があり、輸送機能をin vivoで個人毎に予測することは、薬物治療上重要である。OCTsの内因性基質の血漿中濃度は、in vivoにおいてOCTsの機能や薬物相互作用を予測するバイオマーカーとして有用であり、本研究は、OCTs阻害剤の投与で血漿中濃度が変化する内因性基質を探索し、OCTs機能変化のバイオマーカーとしての有用性を確立することを目的とした。マウスにOCTs阻害剤tetrapentylammonium (TPeA; 11.3 mg/kg)またはvehicleを静脈内投与し、血漿サンプルをLC-TOF-MSで網羅的に測定した。アンターゲットメタボローム解析の結果、複数のacylcarnitineの血漿中濃度が、TPeA投与群においてvehicle投与群よりも高かった。Acylcarnitinesは、4級アンモニウムカチオンであるため、カチオン性化合物を基質とするOCT1で輸送される可能性がある。マウスにOCTs阻害剤としてTPeA (3.8および11.3 mg/kg, i.v.)またはimatinib (100 mg/kg, p.o.)を投与後のacylcarnitinesの血漿中濃度推移をLC-MS/MSで測定した結果、複数のacylcarnitineの血漿中濃度が、vehicle投与群に比べ経時的に増加した。Acylcarnitinesを、OCT1/OCT3発現細胞と一定時間インキュベーションし、発現細胞への化合物の取り込みが対照群よりも上昇するか、取り込みが阻害剤で阻害されるかを評価中である。
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