研究課題/領域番号 |
18K06747
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
津田 真弘 京都大学, 薬学研究科, 講師 (10726813)
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研究分担者 |
山下 富義 京都大学, 薬学研究科, 教授 (30243041)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗HIV薬 / トランスポーター / 血液脳関門 / HIV関連神経認知障害 / BCRP / 脂溶性 / インテグラーゼ阻害薬 / 有害事象自発報告データベース |
研究実績の概要 |
本研究では、抗HIV薬の中でキードラッグであるインテグラーゼ阻害薬3種の血液脳関門透過におけるトランスポーターの関与と、それに伴う中枢移行性の違いを明らかにすることで、HIV感染患者の合併症の一つであるHIV関連神経認知障害(HAND)発症抑制に有効な薬物選択法の開発を目的とする。3年間の補助事業期間の内の2年目にあたる本年度は、インテグラーゼ阻害薬のBBB透過に関わるトランスポーターの同定およびin vivoにおけるインテグラーゼ阻害薬ドルテグラビルの体内動態評価を行い、以下の成果を得た。
1.インテグラーゼ阻害薬のBBB透過に関わるトランスポーターの同定 初年度にインテグラーゼ阻害薬の一つであるドルテグラビルが排出型トランスポーターであるBCRPの基質となることを明らかにした。本年度は他のインテグラーゼ阻害薬であるラルテグラビルおよびビクテグラビルについて極性細胞における輸送実験評価系を用いて検討を行った。ビクテグラビルはBCRPを介した輸送が認められたが、ラルテグラビルについてはBCRPを介した顕著な輸送は認められなかった。
2.マウスを用いたin vivoにおけるドルテグラビルの体内動態評価 ICRマウスにドルテグラビルを経口投与後、血中濃度を経時的に測定することで体内動態を評価した。BCRPの阻害剤であるクルクミンを前投与した群とコントロール群の間で投与後24時間までのAUCを比較したところ、有意な差は認められなかった。クルクミンは消化管からほとんど吸収されないため、消化管におけるBCRPの寄与は小さいことが示唆された。一方、消化管から吸収されるBCRP阻害剤であるフェブキソスタットを用いた実験も行い、現在、ドルテグラビルの血中濃度への影響や臓器への分布に対する影響を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の目標は、3種のインテグラーゼ阻害薬のうち、初年度に評価の終わっていなかった2剤の評価を行うこと、およびin vivoにおける薬剤中枢移行性の評価系の確立であった。インテグラーゼ阻害薬については、当初予定していたエルビテグラビルに代わり、新規に承認されたビクテグラビルを用いた。ビクテグラビルは排出型トランスポーターであるBCRPの基質となることが確認できた。in vivoにおける薬剤中枢移行性の評価については、ドルテグラビルの経口投与後24時間までの血中濃度プロファイルを確認した。また、脳をはじめ、肝臓、腎臓といった主要な臓器を採取し、LC-MS/MSにおいてドルテグラビル濃度を定量出来るところまで確立した。また、本来は遺伝子改変マウスを用いてBCRPの寄与を確認する予定であったが、予算の関係上、遺伝子改変マウスの購入が困難であったため、代替としてBCRP阻害剤であるクルクミンおよびフェブキソスタットを用い、in vivoにおける中枢移行性の評価を可能とする実験系をおおむね確立出来た。以上より、当初の目的は達成できており、おおむね当初の予定通り進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
確立したマウスin vivo系において、ラルテグラビルおよびビクテグラビルの体内動態および脳への移行を評価し、インテグラーゼ阻害薬3種の中枢移行性を比較する。それらの結果と初年度に有害事象自発報告データベースFAERSを用いて行った実臨床データの解析結果との相関性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)遺伝子改変マウスの購入を試みたが、高額で購入できなかったため、当初の予定と変更し阻害剤による検討に切り替えた。それにより、実験動物の購入費および飼育費が減額となったため、次年度使用額が発生した。
(使用計画)継続的な動物実験を計画しており、その経費として使用予定である。
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