研究課題
薬剤性肺障害、特に肺線維症の致死率は高く、極めて重篤な障害であるが、その発症機構を細胞・分子レベルで解析した報告は乏しい。本研究ではヒト肺由来細胞A549を用い、薬剤処置による細胞内経路を介した上皮間葉転換(EMT)誘発と細胞外分泌因子が関与するEMT誘発経路の両面から解析を進め、今年度はMTXを処置したA549細胞を用いた網羅的な遺伝子発現変動解析を行い、バイオインフォマティクスの手法を用いて関連が深い分泌因子の探索を行った。それら解析から見出されたplasminogen activator inhibitor 1 (PAI-1)に着目し、MTX誘発性EMTにおけるPAI-1の役割について検討し、以下のような結果を得た。1.網羅的な遺伝子発現変動解析の結果、MTX誘発性EMTにPAI-1の活性が関与する可能性が示唆された。2.MTXはTGF-βシグナル経路の活性化を介してPAI-1の発現及び分泌を増強している可能性が示唆された。3.MTXによるPAI-1とEMTの指標であるα-SMAのmRNA発現変動の間に正の相関関係が認められ、PAI-1阻害剤によってMTXによるEMTの誘発は有意に抑制された。4.PAI-1との相互作用が報告されているurokinase plasminogen activator receptor (uPAR)のノックダウンによって、MTXによるEMTの誘発は抑制された。以上の結果から、A549細胞において、MTX誘発性EMTにはTGF-βシグナル経路を介したPAI-1の分泌およびuPARとの相互作用が関与している可能性が示唆され、PAI-1がMTXによる肺障害の治療標的になりうる可能性も考えられた。さらに、肺線維症モデルラットおよびマウスの作出を行うため、にBLMやMTXの至適投与方法を決定した。
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