研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度に引き続き消化管運動と神経内分泌ペプチドとの関連性を明らかにするため,漢方方剤の使用していない担がん患者30名について,経時的に採血を行い(術後1日目、3日目、7日目の計3ポイント),血漿中神経内分泌ペプチド(acylghrelin desacylghrelin,motilin,substance P,nesfatin-1)を酵素免疫測定法にて測定を行った.その結果,消化管運動(腸動・排便等)が認められた患者では認められなかった患者に比較して,血漿中acylghrelinおよびmotilin濃度が有意に増加していた.さらにacylghrelin/desacylghrelin比と血中エステラーゼ濃度も有意に低下していることが明らかとなった.この結果より,血漿中acylghrelinとmotilinの挙動解析が腸管運動の指標となりうる可能性が示唆された.漢方方剤(大建中湯,六君子湯)が投与されたがん化学療法実施患者について,化学療法実施前(day1), day3, 5, 8の早朝に採血を行い,血漿中神経内分泌ペプチド濃度を測定した.対照群として,すでに血漿中神経内分泌ペプチド濃度測定が終了した患者(漢方方剤非投与群)10名のデータとの比較を行い,副作用(血液毒性、非血液毒性)発現状況および漢方方剤の効果を検証した.その結果,漢方方剤により影響する神経内分泌ペプチドは異なること,そして各漢方方剤の効果と神経内分泌ペプチドが有意に関係していることを明らかにした.以上の結果により,がん患者への治療において漢方方剤を選択するうえで血漿中神経内分泌ペプチドの挙動解析が有用であることが明らかとなった.
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