研究課題
6-mercaptopurine (6-MP)等チオプリンの反応性にはNUDT15遺伝子多型が関連している。白血病細胞の持つNUDT15遺伝子多型によるチオプリン反応性の差の要因を明らかにするために、白血病細胞から樹立したCell Line84株にチオグアニンを添加して培養し、DNAを抽出して取り込まれているDeoxy thioguanine (dTG)量をLC-MS/MSで測定した。その結果、培養液にチオグアニンを0.1μM添加して48時間の培養をした後に、DNAを抽出して取り込まれているdTG量を測定した。細胞株がNUDT15遺伝子多型を持つことによってDNA中のdTGの取り込み量が有意に高くなっていることが明らかとなった (P < 0.01)。特にNUDT15遺伝子多型をbi-allelicで持つ場合には、野生型に比べて中央値が約4倍となっていた。このことから、NUDT15酵素機能が低下する多型を持つことによって、チオグアニンヌクレオチドの脱リン酸化が低下することで、DNA中のdTG量が高くなると考えられる。今後、NUDT15遺伝子多型を持つ患者に対して、低用量のチオプリンを使用した場合、血漿中のチオプリン濃度は低下することが考えられるため、培養液中のチオプリン量を低濃度とした場合にDNA中のdTG量がNUDT15野生型と同程度になる濃度を検討する。小児白血病患者のうち、実際に6-メルカプトプリンによる治療を行なった患者から定期的に末梢血を採取し、血球細胞内の6-メルカプトプリン代謝物濃度およびDNA中のdTG量をLC-MS/MSによって測定を行っている。時系列的に6-MP代謝物濃度を測定することによって、体内への蓄積の程度を検討している。NUDT15等の遺伝子多型は6-MP薬物動態を変動させることから、患者の臨床情報とDNA中のdTG濃度、6-MP投与量との関連性を明らかにすることによって、6-MPの投与量の設定根拠を示すことができると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
Cell Lineによる効果発現の機構について、検討が予定通り進んでいる。小児白血病患者のDNA中dTG濃度測定が実施可能であることを確認できており、患者エントリーを既に開始している。
小児白血病患者の6-MP代謝物解析を進めるために、患者エントリーを促進していく。患者より得られたDNAを用いて6-MPに関連する遺伝子多型の解析を行い、濃度推移、診療情報や薬剤投与量との関連性を解析する。以上の検討を実施することで、DNA中の6-MP代謝物が薬剤反応性の予測に利用できるかを検討する。
検体輸送料として計上していたが、共同研究先から送付された回数が少なかったために次年度への繰越額が生じた。この次年度使用額は翌年度の検体輸送料として使用する。
すべて 2019
すべて 学会発表 (1件)