研究課題
小児急性リンパ性白血病の治療で6-メルカプトプリン(6-MP)を服用している患者17例より、治療中に採取した52採血点の末梢血を得た。白血球から抽出したDNAおよび赤血球中に含まれる6-MP代謝物濃度の測定をUPLC-MS/MSによって行った。抽出したDNAを用いて、NUDT15の遺伝子多型解析を行った。測定で得られた代謝物濃度とNUDT15多型、臨床情報について、関連性の検討を行った。6-MP投与量に対するDNA中のdeoxy thioguanosine (DNA-dTG) 量は、NUDT15多型の含まれる遺伝子の数が多くなることで有意に高い値を示した。また、赤血球中のThioguanine nucleotides (TGNs)濃度に対するDNA-dTG量についてもNUDT15多型の数に応じて有意に高くなっていた(P < 0.01)。この結果より、NUDT15多型を持つことでNUDT15活性が低下するため、6-MP活性代謝物であるthioguanosine triphosphateの量が細胞内で高くなり、DNAに取り込まれるdeoxy thioguanosine量が多くなったと考えられる。また、6-MP代謝物濃度と臨床情報との関連性を検討した。血液毒性や消化器毒性が発現した群と非発現群におけるDNA-dTG量およびTGNs濃度の中央値を比較したが、差はなかった。一方で、DNA-dTG量が高値を示した時点では好中球減少の発現の頻度が高くなっていたが、TGNs濃度にはそのような関連性は見られなかった。以上より、DNA-dTG量は6-MPによる治療中の毒性発現に関連している可能性があり、特にDNA-dTG量が高くなりやすいNUDT15多型を持つ患者では、毒性の発現の指標になる可能性があると考えられる。
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