研究課題/領域番号 |
18K06758
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
大谷 壽一 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (70262029)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 遺伝子多型 / シトクロムP450 / OATPs / 飲食物成分 / 薬物相互作用 / 代謝酵素 / トランスポータ / 果汁 |
研究実績の概要 |
本研究では、CYP2C9, CYP2C19, OATP1A2, OATP2B1 を介した相互作用に個人差をもたらす遺伝的要因を定量的に解明することを目的に、これらの遺伝的バリアント (アミノ酸変異を伴うもの) の代謝/輸送活性に対する各種飲食物成分の阻害特性を定量的に評価することを目的としている。 本年度は、まずCYP2C9についてCYP2C9.1, .2, .3 の3種のバリアントにおいて、代謝活性に対する飲食物成分(レスベラトロール及びセサミン)の阻害特性を比較検討した。その結果、セサミンはいずれのバリアントに対しても時間依存的阻害を示したが、その阻害強度 (kinact/KI) はバリアント間で大きく異なった。一方、興味深いことにレスベラトロールはCYP2C9.2に対してのみ時間依存的阻害を示した。 CYP2C19に関しては、昨年より継続している6種の遺伝的バリアントについての詳細なキネティクス解析を終えて国際学会で発表した。現在、基質の種類を変更して同様の解析を実施している。さらに、レスベラトロール、ベルガモチン、ジヒドロキシベルガモチンに関して、6種の遺伝的バリアントに対する阻害特性及び阻害強度の解析を進めており、いずれの阻害様式も主に時間依存的阻害であることが示された。 OATPs に関しては、天然果汁由来OATP1A2阻害成分として、ナリンギン、ナリンゲニンに加えて、かんきつ果汁から、強い阻害作用を有するナリルチンを同定し、その阻害特性を解析し、学会発表した。また、OATP2B1については、クランベリーに強い阻害作用を有するか区分を見出し、現在、その単離同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象としているCYP2C9, CYP2C19, OATP1A2, OATP2B1 について、それぞれの遺伝的バリアントの機能を評価する系が順調に確立稼働し、各種飲食物の影響が順次定量的に評価されている。そして、飲食物から新たな阻害成分 (ナリルチン) を発見することもできた。また、研究1年目の成果については、国際学会や国際誌にその成果が発表された。今後も学会発表も継続される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、飲食物由来の各種阻害剤について阻害様式の評価や阻害特性の定量的評価を行うとともに、さまざまな飲食物について広くサーチし、新たな阻害成分の同定につとめる。併せて、バリアント間での阻害様式の差異や、それをもたらす機構についても解明を進めていきたい。また、得られた成果をもとに、薬物-飲食物間相互作用の臨床的インパクトを評価するための IVIVE (in vitro-to-in vivo extrapolation) についても実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月に参加予定であった日本薬学会第140年会が、COVID-19の影響で実会場での開催中止となり、予定していた旅費が支出されなかったため。当該金額は、次年度の学会発表にかかる旅費、および物品費(消耗品費)として使用する予定である。
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