研究課題
メンケス病は、銅輸送タンパク質ATP7Aの遺伝子異常により銅の吸収および組織移行が低下するため、中枢神経障害など銅欠乏に由来する重篤な症状を呈し、多くが幼児期に死亡する希少疾患である。昨年度までに、メンケス病モデル動物マクラマウスにおいて有効性が示されているglyoxal-bis(N(4)-methylthiosemicarbazonato)-copper(II) (CuGTSM) および類似の銅錯体であるdiacethyl-bis(N(4)-methylthiosemicarbazonato)-copper(II) (CuATSM) をマウスに経口投与した際の体内動態を検討した。両錯体ともにナノ粒子化することにより吸収性が増大すること、C3H/HeNCrlマウス (対照マウス) と比較してマクラマウスにおいて、銅とリガンドに解離しやすいことを示した。今年度は、投与回数を減らすという観点での患者の負担軽減を図るため持続的な放出を目的としたCuATSMマイクロスフェア皮下投与後のCuATSMの体内動態を検討した。マクラマウスおよび対照マウスともに投与24時間後まで血漿中にCuATSMおよびリガンドが検出されたことから、皮下投与したマイクロスフェアからCuATSMが放出されたことが示唆された。また、マクラマウスにおいて経口投与時と同様の銅と錯体への解離の促進が認められた。メンケス病においては、脳へ銅が送達される前に銅錯体が解離してしまうと脳への十分な銅輸送が期待できなくなることから、今後は解離の程度を改良した銅錯体を創製し、メンケス病治療薬候補としての有効性を検討していく必要があると考えられた。
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