研究課題/領域番号 |
18K06764
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
大倉 一人 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 教授 (00242850)
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研究分担者 |
田端 厚之 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (10432767)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | cytolysin / 感染症 / 生体膜 |
研究実績の概要 |
1) 2-nitroimidazole 骨格を有するTX-1877へ糖を付加し、その放射線増感能を制御することを試みた。TX-1877の水酸基へ、1) β-グルコース (TX-2141)、β-ガラクトース (TX-2218)、α-マンノース付加体 (TX-2217)、2) tetra-O-acetyl β-glucose (TX-2244)、tetra-O-acetyl β-galactose (TX-2245)、tetra-O-acetyl α-mannose付加体 (TX-2246)、N-acetyl β-galactosamine (TX-2068)、tri-O-acetyl N-acetyl β-galactosamine付加体 (TX-2243) を作成した。TX-2244 (ER=2.30) で高い効果が確認できた。TX-2246 (ER=1.88) でも増感能の向上が見られた。単糖付加体の最安定構造のdGW値が-160kJ/molから-180kJ/mol近辺だっとのと比較して、アセチル化体のdGW値はより小さく、いずれも疎水性度の上昇がみられた。最安定構造のdGW値が-250kJ/mol近辺のTX-2244およびTX-2246が良好な放射線増感能を示し、標的細胞との相互作用に適切な疎水性度の目処がつき、より効率的な分子設計を試行している。
2) ヒト咽頭口腔内の常在細菌であるStreptococcus anginosus subsp. anginosus(SAA)には溶血株を示すサブグループが存在し、これらの株はペプチド溶血因子であるstreptolysin S(SLS)を産生することによってβ溶血性を示す。このSLSについては、これまでに「溶血因子ではあるが細胞障害性には寄与しない」ことが他の研究グループから報告されていたが、我々は評価系の再検討を行い、遺伝子組換えの手法を用いて作製したSLS非産生株を用いた検討によって、SAAが産生するSLSも細胞障害因子としての機能を示すことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で用いるウェット系実験手法はこれまでに十分運用実績のある遺伝子操作、細胞培養、タンパク質生成・修飾などであり、実施過程で不具合が生じにくい。また、各種ライブラリーも整備されてきており、柔軟迅速に対応出来る。ドライ系実験手法である分子力学法、分子動力学法、分子軌道法、ホモロジー解析、ドッキング解析、キャビティー解析などが整備されており、研究に進捗に応じてきめ細かく対応可能である。共同研究者、研究協力者との定期的な打ち合わせによって得られたデータを開示して議論することで、問題点や研究の進め方が明確にできた。これらの理由から概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1) Chiral-2-nitroimidazole骨格を有するTX-2036誘導体の立体異性と放射線増感能の相関解析。TX-2036は強い放射線増感能を有し、その誘導体は分子中に不斉炭素を持ち、R-体 (TX-2043、TX-2030、TX-2036) とS-体 (TX-2044、TX-2031、TX-2037) が存在する。TX-2043とTX-2044、TX-2030とTX-2031、TX-2036とTX-2037、がキラルペアとなる。これらの放射線増感能への効果を検証する。
2) ヒト咽頭口腔内の常在細菌であるStreptococcus anginosus subsp. anginosus(SAA)には溶血株を示すサブグループが存在し、これらの株はペプチド溶血因子であるstreptolysin S(SLS)を産生することによってβ溶血性を示す。SAAが産生するSLSが細胞障害因子として機能発現する際の急性的膜溶解、亜急性的膜溶解について検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
例年3月に開催される細菌学会が、札幌開催のため時期が4月に変更されたため、旅費宿泊費を調整したため、一部予算を次年度に繰り越した。
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