研究課題/領域番号 |
18K06767
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
加藤 隆児 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (30411482)
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研究分担者 |
林 哲也 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (30257852)
井尻 好雄 大阪薬科大学, 薬学部, 准教授 (50449823)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インフラマソーム / 反応性代謝物 / cytochrome P450 / 抗原提示細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、特に肝臓において薬物およびその反応性代謝物がインフラマソーム反応を活性化させるか否かを検討すると共に、細胞を用いた評価系の開発を行っている。 平成30年度は、薬物の反応性代謝物が原因となり、抗原提示細胞(APC)においてインフラマソーム反応を活性化させるか否かについて検討を行った。具体的には、現在までに薬物性肝障害の報告がある薬剤(アセトアミノフェン、アモジアキン、エンタカポン、ネビラピン、トルカポン、トログリタゾン、ピオグリタゾン)を肝細胞に添加し、その培養上清をAPCに添加することで、APCのインフラマソーム反応が活性化されるか否かの検討を行った。インフラマソームが活性化されると、caspase-1の活性化が起こり、IL-1βが細胞外に放出されることがわかっていることから、APCに分化誘導を行ったTHP-1細胞のcaspase-1活性およびTHP-1細胞から放出されるIL-1β量を測定した。その結果、上記薬物の中で、アセトアミノフェン、アモジアキン、エンタカポン、ネビラピン、トルカポン、トログリタゾンにおいて、肝細胞中で産生された反応性代謝物がTHP-1細胞のインフラマソーム反応を活性化させることを明らかにした。本反応は、非特異的cytochrome P450阻害剤である1-aminobenzotiazoleを加えることで抑制されたことから、cytochrome P450の代謝により産生された反応性代謝物が関与していると考えられた。また、アモジアキンについては、薬物そのものがTHP-1細胞のインフラマソーム反応を活性化させることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標として、①danger signalが肝実質細胞から放出され、②抗原提示細胞(APC)においてインフラマソーム反応を活性化させること、の2点を明らかにする。平成30年度の研究結果からアセトアミノフェン、アモジアキン、エンタカポン、ネビラピン、トルカポン、トログリタゾンが肝細胞で代謝され、その反応性代謝物がAPCのインフラマソーム反応を活性化させることが明らかとなった。残り2年で、他の薬物(カルバマゼピンなど)で、その反応性代謝物がAPCのインフラマソーム反応を活性化させるか否かを引き続き検討すると共に、その原因となるdanger signalが何であるかを探索する予定である。進捗状況としては計画通りであり、原因物質の探索を行うための時間も十分にあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況の箇所でも述べたが、本研究の目標として、①danger signalが肝実質細胞から放出され、②抗原提示細胞(APC)においてインフラマソーム反応を活性化させること、の2点を明らかにする。平成30年度の研究結果からアセトアミノフェン、アモジアキン、エンタカポン、ネビラピン、トルカポン、トログリタゾンが肝細胞で代謝され、その反応性代謝物がAPCのインフラマソーム反応を活性化させることが明らかとなった。しかし、当初の計画ではカルバマゼピンなど他の薬剤も挙げていることから、引き続き今回検討を行った薬剤以外で、その反応性代謝物がAPCのインフラマソーム反応を活性化させるか否かを検討する。Danger signalとしては、high mobility group box 1(HMGB1)やS100s、heat shock protein(HSP)などのdamage associated molecular patterns(DAMPs)について検討を行う。インフラマソーム反応を活性化している物質が明らかとなれば、薬剤性肝障害時に原因物質の中和抗体を投与する等、有効な治療法の開発にもつながると考えられる。また、検討を行いながら、薬物性肝障害のスクリーニング評価系の開発も行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況としては、当初計画していた金額よりも少ない額となり、繰越金が発生したためである。本助成金については、翌年度分として請求した助成金と併せて、今年度行った研究を来年度も引き続き行うこと、また実験計画に従って来年度は更に新たな研究を行う予定であり、主にその物品費に使用する予定である。
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