研究実績の概要 |
本研究では、肝臓において薬物およびその反応性代謝物が抗原提示細胞(APC)のインフラマソーム反応を活性化させるか否かを検討すると共に、細胞を用いた評価系の開発を行っている。 2020年度は、当初の計画に追加して肺がん治療に用いられる分子標的薬剤であるゲフィチニブについても検討を行った。ゲフィチニブを肝細胞に添加し、その培養上清をAPCに添加することで、APCのインフラマソーム反応が活性化が起こるかどうかについて評価を行った。インフラマソームが活性化されると、caspase-1の活性化が起こり、IL-1βが細胞外に放出されるため、APCに分化誘導を行ったTHP-1細胞のcaspase-1活性およびTHP-1細胞から放出されるIL-1β量を測定した。その結果、ゲフィチニブについては、その反応性代謝物がインフラマソーム反応を活性化させることを明らかにした。 また、本研究でAPCのインフラマソーム反応を活性化することが明らかとなった薬剤について、肝細胞から産生されるdamage associated molecular patterns(DAMPs)の検討を行った。その結果、heat shock protein (HSP)量の有意な増加が認められた。本年度検討を行った薬剤について増加が認められたHSPは以下のとおりである。アミオダロン, HSP40; エンタカポン, HSP90; カルバマゼピン, HSP60; ゲフィチニブ, HSP40, 70, 90; トルカポン, HSP40, 90; トログリタゾン, HSP40。以上の結果から、特異体質性薬剤性肝障害発症機序の一つとして、肝細胞からDAMPsとしてHSPが放出され、APCのインフラマソーム反応が活性化されることが考えられた。
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