研究課題
骨転移を有するがん患者を対象に、実臨床における副作用マネジメント、特に顎骨壊死とそのリスク因子に着目し、研究を展開した。骨転移を有するがん患者の薬物治療は、がん治療に加えて骨転移に伴う諸症状の予防と対策が加わるため複雑になり、より安全ながん薬物療法の実施に向けた副作用の早期発見と対策法の開発を推進する必要がある。以上の背景に基づき、神戸市立医療センター中央市民病院病院で骨転移治療薬を受けたがん患者を対象に、以下の評価検討を行った。(1)骨転移治療薬の投与法と副作用発現リスク評価と回避策の探索:骨転移治療薬としてデノスマブとゾレドロン酸が頻用され、ともに重大な副作用として顎骨壊死が起こり得る。374例を対象とした解析で34例に顎骨壊死が発生し、デノスマブではゾレドロン酸に比べ有意に顎骨壊死の発症リスクが高い一方、治癒はより早く副作用を早期に発見することの重要性が示された。現在さらにリスク評価を進め、患者背景を調整し解析を行っている。(2)副作用回避に向けた処方支援策の立案とその有用性評価:進行がんでは骨転移と併行して複雑な薬物療法が行われる。肺がん患者を対象にドセタキセル療法による発熱性好中球減少症の早期発見と対策を目的としてリスク因子を解析したところ、全身状態がやや低下していること、治療開始時点での血小板数低値がリスク因子であった。さらに、免疫チェックポイント阻害薬による有害事象の早期発見を目的として、薬剤師が検査オーダーの支援を行う取り組みを開始した。その結果、検査実施率の顕著な向上による有害事象の早期発見に加え、支援策の具体例として医療におけるタスク・シェアリング推進のモデルとなり得ることが示唆された。次年度は、上記の研究をさらに進め、安全ながん薬物療法の推進に寄与したいと考えている。
2: おおむね順調に進展している
顎骨壊死の評価については一定の結果が得られ、さらに患者背景を調整しながら精査を進めている。その中で、顎骨壊死の発現リスクについて骨転移治療薬の作用機序を反映した新規知見を得ている。また、骨転移治療薬と併行して行う薬物療法の安全性向上に向けた、副作用の早期発見と対策法の検討を進めている。具体例として、前立腺がん患者における経口抗がん薬治療に薬剤師が関わることで、副作用による治療中止が減り、結果としてより高い治療効果が得られることが示唆される知見を得た。この取り組みは、骨転移を有する様々ながん種、薬物療法への応用が期待でき、本研究課題の重要な目的である副作用の早期発見と対策法の開発と評価に向けた研究を着実に遂行している。
顎骨壊死の評価については、骨転移治療薬による副作用のリスクについて定量的評価を進めている。今後の推進方策として、骨転移治療薬の作用機序に基づく評価、患者背景を調整した解析を進める。骨転移治療薬と併行して行う薬物療法の安全性向上に向けた、副作用の早期発見と対策法の検討についても、がん薬物療法による副作用のリスクを定量的に評価する。さらに、経口抗がん薬治療に薬剤師が関わることによる副作用対策の評価を進め、より安全ながん薬物療法の推進に向けた検討を進める。これらをとおして医療のタスク・シェアリング推進の可能性と具体的方策の妥当性を評価する。
3月に予定していた学会出張が新型コロナウイルス感染症の拡大を受け中止となり、若干の旅費参加費分を次年度に使用することとなった。また、英文校正費等を4月以降に複数支出した。全休費全体の使用は概ね計画通りに使用している。
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