基礎実験の成果として、ラットにCDDP用法B・E法(単回投与+3週間休薬)を種々の用量で実施し腎毒性を定量することで、B・E法での1 cycle時におけるdose-response曲線を得ることができた。また、同様の検討をA・D法(5分割連日投与+2週間休薬)でも実施した。その結果、同一総投与量のB・E法に比べて、A・D法では腎毒性が軽減されており、分割投与による腎毒性軽減効果を証明する新たなエビデンスを示せた。この結果より、腎毒性は相加的ではなく相乗的に蓄積されていくことが示唆された。CDDPのmulticycle投与検討では、CDDP用法B・E法(単回投与+3週間休薬)を3 cycleを実施し、得られた腎毒性(亜慢性腎毒性:sCKI)を以下の2つのモデルで検証した。 相加モデル:DsCKI=(1 - ∑CDDPγ/(Kmγ + ∑CDDPγ)) 相乗モデル:DsCKI=Π(1 - CDDPγ/(Kmγ + CDDPγ)) DsCKI:亜慢性腎毒性増悪化係数、CDDP:CDDP投与量、Km:50%最大毒性投与量、γ:Hill係数。 1 cycle実験の結果からの予想に反して、相加的および相乗的腎毒性モデルでの予測性能は同等であった。原因を精査したところ、両モデルの判別は約10 cycle以上の反復が必要であると考えられ、最終的なモデルの優劣は臨床研究で評価されるべきと考えた。 臨床研究に関して、COVID-19パンデミックによりデータ収集が大幅に遅延し、計画通りの進捗は得られなかった。データ収集は完了したが、現在解析中であり、結果が得られ次第公開していく予定である。
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