研究課題/領域番号 |
18K06774
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
門脇 大介 崇城大学, 薬学部, 教授 (70433000)
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研究分担者 |
瀬尾 量 崇城大学, 薬学部, 教授 (20435142)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 尿毒症物質 / TMAO / 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)はQOLの低下や予後不良となる難治性疾患である上,末期腎不全になると透析が導入される結果,医療費が急増するため,CKD対策は全世界のヘルスケアに共通した緊急かつ深刻な問題として重要視されるようになってきた。さらに,腎細胞癌(RCC)をはじめとする各種がんの発症リスクも増大している。CKDなどの腎不全に伴ってその血中濃度が上昇する物質として,トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)が注目されている。このTMAOについて,2011年にHazenらが心血管イベントの発症に関連することを報告した。また,心不全との関連性も示唆されており,循環器系疾患の治療標的として注目されている。一方で,新規尿毒症候補物質のTMAOと腎臓もしくはCKD患者のがん発症リスクの上昇との間には何らかの関連性の存在が疑われるが,その詳細については明らかでない。そこで,まず,本邦で罹患者数が増加している腎細胞癌(RCC)に着目し,TMAOと抗がん薬の効果について検討した。その結果,RCCに対して各種尿毒症物質を添加したところ,TMAO高濃度でRCCの増殖が抑制された。また,RCCに対する第一選択薬で,マルチチロシンキナーゼ阻害薬であるスニチニブ(SU)の抗腫瘍活性は,尿毒症物質であるインドキシル硫酸(IS)およびパラクレジル硫酸(PCS)の存在下で低下することが示唆された。一方で,TMAOについてはその抗腫瘍効果に影響を与えなかった。つぎに,ストレプトゾトシン誘発の糖尿病性腎症モデルラットを作製し,尿毒症物質の蓄積について評価したところ,ISおよびPCSに先行してTMAOの血中濃度が上昇することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞実験および動物実験をバランスよく行えている。一方,結果については予想に反した興味深い知見が得られている点もあり,当初よりも検討項目が増えてきている部分もある。そのため,総合的に判断すると概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度と同様に,in vivoおよびin vitroの実験系をバランスよく実施する予定である。In vitroについてはTMAOの細胞毒性および酸化ストレスに対する影響を,引き続き明らかにしていきたい。具体的には尿細管細胞および血管内皮細胞を用いて評価し,腎臓への影響を詳細に検討する。また,動物実験においては,高リン食負荷による慢性腎臓病モデルマウスを用い,TMAOの生体内蓄積および毒性評価を行う。また,TMAOを含めた尿毒症物質の蓄積軽減のための戦略として,腸内細菌叢をターゲットに腸腎連関調節薬の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
効率よく研究が遂行できたため,若干であるがコストダウンとなった。
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