研究課題/領域番号 |
18K06774
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
門脇 大介 崇城大学, 薬学部, 教授 (70433000)
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研究分担者 |
瀬尾 量 崇城大学, 薬学部, 教授 (20435142)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腸腎連関 / ラクツロース / 尿毒症物質 / 合成二糖類 |
研究実績の概要 |
近年のマイクロバイオーム研究の発展により, 合成二糖類であるラクツロース (Lac) は,肝性脳症,慢性便秘症に対する治療薬としてのみならず,プレバイオティクスとして腸内環境を改善することが期待されている.とりわけ,腸内環境と腎臓が互いに影響を及ぼし合う腸腎連関が注目されており,腎不全モデルマウスに下剤であるルビプロストンを投与することで腸内環境が改善し,腎機能の悪化を抑制することが報告されている.慢性腎臓病 (CKD) において腸腎連関を改善するためのターゲットとなりうるのは,便秘の解消,腸内環境の正常化,尿毒症物質の蓄積抑制であるが,Lacは排便促進作用,腸内環境改善作用を有することから,腸腎連関に影響を及ぼすことが推察される.そこで本研究では,アデニン誘発腎不全モデルラットにおけるLacの有効性を評価した.10週齢のWistar/ST系雄性ラットに,0.75 % アデニン含有飼料を3週間与えて腎不全モデルを作製し,アデニン中止後に3.0 %及び7.5 %の用量にてLacを4週間混餌投与することで,腎機能及び腸内環境の評価を行った.その結果,アデニン投与により血清クレアチニン,BUNが増加し,尿毒症物質の蓄積に伴う腎線維化,腸内環境の変化が認められた.興味深いことに,Lac投与により血中のインドキシル硫酸 (IS),p-クレシル硫酸 (PCS) が減少し,腎線維化及び腎機能の低下が有意に抑制された.加えて,有用細菌群であるBifidobacteriumの増加傾向,ISの前駆物質であるインドールを産生する菌叢を多く含む腸内細菌群の減少傾向が認められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は,動物実験のスムーズな実施により,良好な成果が得られた.一方,腎臓の細胞を用いた検討では,既報の結果と異なる知見が得られているため,研究計画の修正が必要となる部分もあった.そのため,全体としては概ね順調と感じていた.しかしながら,年度末からの,新型コロナウイルスの感染拡大により,研究停止の状態になったため,数ヶ月間の遅れが生じ始めている.この点を鑑みて,やや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
細胞実験において,これまでの情報と異なる知見が得られているため,この点についての最終検証が必要である.また,コロナウイルスの影響も考慮しなければならない.しかしながら,これまで得られたメインとなる結果から考えると,大きな軌道修正は必要ないと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2月より発生した,新型コロナウイルス感染症により,実験の中断を余儀なくされたため,わずかながら残額が生じた.実験再開時には必要となるため,次年度にて使用する.
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