研究課題/領域番号 |
18K06776
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
鈴木 琢雄 国立医薬品食品衛生研究所, 生物薬品部, 主任研究官 (10415466)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | FcRn / Fc融合タンパク質 / FcRn親和性改変抗体 / 分布 / 分解 / 体内動態 / ヒトFcRnトランスジェニックマウス |
研究実績の概要 |
抗体医薬品は、そのFc部分が血管内皮細胞等に存在する新生児型Fc受容体(FcRn)と結合し、分解から保護されることで、比較的長い血中半減期を持つことが知られている。FcRnはトランスサイトーシスや抗原提示細胞内の輸送にも関与するとされており、FcRn親和性の違いは抗体医薬品の動態や抗原提示に広範な影響を及ぼすと考えられる。近年、従来の抗体医薬品とは一線を画す分子設計をなされた抗体医薬品の開発が激化しているが、その中にはFcRn親和性が従来の抗体医薬品とは異なる、もしくは異なる可能性があるものも多い。今後の効果的な抗体医薬品類の分子設計につなげるため、また、これらの医薬品の有効性、安全性に関わる知見を得るために、FcRn親和性を改変した抗体とヒトFcRnトランスジェニックマウスを用いて、未分解抗体と分解物を区別可能な分布解析法等による解析を実施し、FcRn親和性が抗体医薬品の動態等に及ぼす影響を明らかにする。 本年度はヒトFcRnトランスジェニックマウスを繁殖させ、蛍光共鳴エネルギー移動型の標識を施した各種改変抗体を投与し、生体内での分布や分解の解析を行った。改変抗体種によって、臓器への蓄積量や分解の程度が異なることが明らかとなった。また、非標識の改変抗体を投与し、血中濃度の推移や抗薬物抗体の産生について解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な流れは以下の通りである。抗TNFα抗体であるアダリムマブの配列を基にFcRn親和性を上昇させた改変抗体6種と、FcRnとの結合性を低下させた改変抗体1種について、発現・精製を行う。これらの改変抗体やFc融合タンパク質医薬品を蛍光標識し、ヒトFcRnトランスジェニックマウスに投与後、臓器の摘出・破砕を行った上でimaging装置を用いて、未分解抗体と分解物を分離して蓄積量を解析する。また、ヒトFcRnトランスジェニックマウスに非標識の上記抗体類を投与し、血中濃度の測定を行うと共に、抗薬物抗体産生の解析を行う。 本年度はヒトFcRnトランスジェニックマウスの繁殖を行い、作製した各種改変抗体の分布や分解、血中濃度の推移や抗薬物抗体の産生について解析した。予定通りの進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は,引き続きヒトFcRnトランスジェニックマウスを用いて、FcRn親和性改変抗体(アダリムマブ改変体)の血中濃度の推移や抗薬物抗体の産生について検討すると共に,標的とする抗原との結合がこれら改変抗体の分布、分解、抗薬物抗体の産生に及ぼす影響等について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているが、年度切り替わり時期の使用額(未払分)を考慮すると、ほぼ予定通りの使用額である。 次年度の研究費は主に,①動物実験消耗品、②抗薬物抗体測定のための表面プラズモン共鳴法関連の消耗品,③改変抗体追加のための発現・精製関連消耗品、④抗原提示に関わる研究に使用する抗原提示細胞、の購入等に使用する予定である。
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