研究課題/領域番号 |
18K06777
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
川端 健二 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 幹細胞制御プロジェクト, プロジェクトリーダー (50356234)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | iPS 細胞 / 疾患モデル / 重症熱中症 |
研究実績の概要 |
これまでに、ラットを用いた検討により、高温(42℃)条件下では、血管透過性が亢進することが報告されているが、高温(熱)が脳毛細血管内皮細胞に与える影響については検討されていない。これまでに、マウスを用いて熱中症モデルを作製し、熱が脳血管内皮細胞に与える影響について検討した結果、通常飼育マウスと比較し40.1 ℃、湿度50%の高温多湿下で2時間飼育されたマウスの脳では血管透過性が亢進していることを確認した。また、ヒトiPS細胞由来脳血管内皮細胞(hiPS-BMECs) を高温条件下で培養した場合、膜間電気抵抗値の低下及び透過性の亢進が観察されたことから、バリア機能が低下することを明らかにした。そこで、熱中症モデルマウスの血清を用いて、血清中に含まれる物質が脳血管内皮細胞に与える影響について検討した。その結果、熱中症モデルマウスの血清中に脳血管内皮細胞のバリア機能が低下させる物質が含まれることを確認した。さらに、血清中に含まれる各種サイトカイン量について検討を行った。その結果、バリア機能の低下を惹起した血清中にはTNF-aが多く含まれていることが明らかとなった。そこで、hiPS-BMECs にTNF-a を作用した結果、バリア機能の低下が観察された。これらの結果は、熱中症の患者血清の結果と一致した。以上の結果から、熱中症の患者およびモデルマウスの血清中に含まれるTNF-a がBBBのバリア機能の低下を間接的に誘導する可能性が示された。本研究により、BBB の障害が関与する病態モデルを構築することができた。現在のところ BBB をターゲットとした薬はなく、今後新しい作用機序の薬を開発する上で有用な知見になるものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト iPS 細胞を利用した血液-脳関門(BBB)モデルを利用して、重症熱中症の病態を in vitro で反映させることができた。すなわち、温度条件を変動させることによるバリア能の変動を再現させることに成功した。また、その原因物質はTNF-a であることを明らかにした。したがって、当初の予定通り順調に進捗しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、重症熱中症だけではなく、他の救急疾患(心停止や敗血症など)患者の血清が BBB バリア能に及ぼす影響を検討し、これら疾患による意識障害における BBB の役割について明らかにしたい。
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