研究課題/領域番号 |
18K06780
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
田口 雅登 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (20324056)
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研究分担者 |
市田 蕗子 富山大学, 事務局, 学長補佐 (30223100)
廣野 恵一 富山大学, 附属病院, 特命講師 (80456384)
吉田 丈俊 富山大学, 附属病院, 特命教授 (90361948)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 蛋白漏出性胃腸症 / 低アルブミン血症 / アロメトリー式 / 心不全 / 小児循環器 |
研究実績の概要 |
小児期は成人よりも薬物動態の変動が大きいため、小児は薬物投与の個別最適化が必要な集団の一つである。本研究では、小児薬物療法の個別化を推進するため、新生児から小児期における薬物体内動態変化に関する情報を得るとともに、薬物動態の共変量とその裏づけとなる根拠を追加し、これまでの研究を発展させる。初年度の研究概要は以下の通りである。 1.ワルファリンの薬効に及ぼす小児の発達変動と心不全の影響:申請者はこれまでに小児の身体発達がワルファリンの抗凝固作用の共変量の一つであり、発達変動の記述にはアロメトリー式が有用であることを明らかにした。しかし、アロメトリー式に加え、発生学的変化を記述するMaturation modelを導入する臨床的意義は不明であった。そこで、小児患者38名(平均年齢3.51歳)の長期追跡によって得た1092点のデータ解析において、同一症例の内的変動と個体間変動を分離評価したところ、アロメトリー式のみを使用した場合とそれにMaturation modelを組み合わせた場合で、抗凝固作用の予測精度に違いは認められないことが明らかとなった。また心不全がワルファリンの薬効に影響を及ぼす共変量であることが新たに示唆された。 2.蛋白漏出性胃腸症(PLE)患者におけるタダラフィルの体内動態:本研究では、治療のためにタダラフィルを服用中であったPLE症例2名の残血清を使用し、低アルブミン血症時の遊離型薬物濃度の変動性を評価した。臨床経過から血中アルブミン値とタダラフィルの蛋白結合率には相関性が認められ、少なくともアルブミンがタダラフィルの重要な結合蛋白質の一つであることが明らかとなった。また、in vitro実験系においてアルブミンのみならずα1酸性糖蛋白質とリポタンパク質がタダラフィルの結合キャリアーとなり得ることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画において研究対象としていたボセンタンを服用してきた症例のほぼ全員が治療上の理由からマシテンタンへの切替を行う事となった。このため、臨床試験の登録症例数は当初見込みよりも少なくなる見通しである。しかし一方で、マシテンタンへ切替した患者が加わる事で研究対象となる患者数が増えるとともに、薬物動態(薬物代謝能)の長期変化を継続的に評価する事も期待される。また、初年度においてPLE症例の薬物動態解析に着手し、過去の試験データと比較した結果、4,5年の間にPLEが徐々に進展し、投与薬物の蛋白結合率が低下傾向にある実態を明らかにできた事から、おおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
症例数の追加が期待できないと判断されるときには速やかに北陸地区の研究協力者の施設からの参加を検討する。その場合は、抗てんかん薬等の循環器官用薬以外の薬物を対象とする選択肢も検討中である。また、小児期においてはCYP3A4の発現変動が予想押される。マシテンタンの肝代謝に関与する分子種を明らかにする目的で、ヒトP450発現系ミクロソームを用いたin vitro実験を行う計画である。
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