研究課題
ファーマコゲノミクス(Pharmacogenomics: PGx)検査は、薬物の代謝酵素などの遺伝子変異を解析することで、薬物の効果や副作用の予測が可能となることから、患者個々に合わせて最適な薬剤選択、投与量調節を行う個別化医療の実現に向けた有益なツールとして期待されている。本研究では、滋賀医科大学病院において運用している電子カルテシステムに連動したPGx検査データベースを活用し、実臨床におけるPGx検査結果と治療効果の関係性の評価を行っている。 初年度である今年は、(1)抗血小板薬クロピドグレルの処方におけるPGx検査の活用状況の実態調査と(2)PGx検査に基づくH. Pylori除菌時のプロトンポンプ阻害薬の選択が除菌効果にあたえる影響の評価を進めてきた。以下にその概要を示す。クロピドグレルは、薬物代謝酵素であるCYP2C19により代謝を受けて活性化されることにより、抗血小板作用を呈するプロドラッグであり、その治療効果はCYP2C19の遺伝子多型により大きく左右されることが知られている。Clinical Pharmacogenetics Implementation Consortium (CPIC) のガイドラインにおいては、CYP2C19の代謝活性が低下する遺伝子変異を有する症例で、プラスグレル等の代替薬の使用が推奨されている。そこで本研究では、クロピドグレルを処方され、CYP2C19の遺伝子多型を測定した患者の情報を当院の電子カルテより抽出し、各遺伝子多型群でのガイドライン適合率を算出した。ガイドライン適合率は代替薬への変更が強く推奨されるホモ変異を有する患者で他の群と比較して高くなっており、PGx検査は一部活用されている実態が確認された。今後さらに、医療経済学的な解析を進め、PGx検査の有用性の評価を進める。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、初年度は電子カルテ情報に基づくレトロスペクティブ調査を中心に行っており、一定の成果を得ているため。
既にレトロスペクティブ研究から一定の成果を得ているため、次年度以降はこれらの結果のさらなる詳細解析とプロスペクティブな臨床研究へと繋げる。したがって、当初の計画からの変更はない。
当初の予定通り症例の集積は進んでいるものの、一部の遺伝子解析が未実施であり、次年度以降に測定を行うため、解析費用を次年度に繰り越した。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)
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