研究課題
ファーマコゲノミクス(Pharmacogenomics: PGx)検査は、薬物の代謝酵素などの遺伝子変異を解析することで、薬物の効果や副作用の予測が可能となることから、患者個々に合わせて最適な薬剤選択、投与量調節を行う個別化医療の実現に向けた有益なツールとして期待されている。 本研究では、滋賀医科大学病院において運用している電子カルテシステムに連動したPGx検査デ ータベースを活用し、実臨床におけるPGx検査結果と治療効果の関係性の評価を行った。抗血小板薬クロピドグレルは、薬物代謝酵素であるCYP2C19により代謝を受けて活性化されることにより抗血小板作用を呈するプロドラッグであり、その治療効果はCYP2C19遺伝子多型により大きく左右される。そのため海外のガイドラインにおいては、CYP2C19の代謝活性が低下する遺伝子変異を有する症例で、プラスグレル等の代替薬の使用が推奨されている。本研究では、実臨床におけるPGx検査の有用性を評価することを目的として、当院において抗血小板薬処方時にCYP2C19遺伝子多型の測定が行われた1580名を対象とした後ろ向きの解析を実施した。抗血小板薬として、クロピドグレルまたはプラスグレルが投与された患者について、血栓や出血といった有害事象のイベント発生率を比較したところ、プラスグレルでイベントの発生率 が低い傾向にあり、特に、CYP2C19の機能が低下する遺伝子多型を保有する患者群ではその傾向が顕著に見られた。以上の通り、実臨床においても、抗血小板療法時におけるCYP2C19遺伝子多型検査の有用性を示唆する結果が得られた。
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