研究課題/領域番号 |
18K06785
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
座間味 義人 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (70550250)
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研究分担者 |
今西 正樹 徳島大学, 病院, 助教 (00734344) [辞退]
武智 研志 徳島大学, 病院, 特任助教 (90793240)
中馬 真幸 徳島大学, 病院, 特任助教 (20819289)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 医療ビッグデータ / 既存承認薬 / ドラッグリポジショニング / 心肺蘇生後脳症 |
研究実績の概要 |
心拍再開後に起こる心肺蘇生後脳症が原因で, 社会復帰率の低下および要介護による医療費の増大を引き起こしている。したがって, 蘇生後脳症による経済的損失は計り知れず, 治療薬の開発が喫緊の課題となっている。近年, 申請者らは医療ビッグデータ解析により, 臨床現場で使われている既存承認薬の新しい薬効を見出し, その薬を別の疾患の治療薬として開発するドラッグリポジショニング研究を実施している。そこで本研究では, 医療ビッグデータを基盤とする新規的な手法を活用して, 既存承認薬を蘇生後脳症治療薬として臨床応用することを目的としている。創薬ツールである”TargetMine”を用いて, 神経保護効果に関連する作用を有する候補薬剤を抽出したところ、300種類の薬剤が抽出された。それらの候補薬剤の中から、日本医療データセンターから取得した約3000人心肺停止症例において、50例以上に使用されており、 かつ注射薬である5種類の薬剤を選択した。この5剤と生存退院との関連性を評価した結果、 チオペンタールだけは生存退院に対する調整オッズ比が有意に高い値を示した。さらに、マウス海馬由来HT22神経細胞用いた検討において、チオペンタールは心肺停止病態を想定した低酸素条件下における神経細胞死を有意に抑制した。そこで現在は塩化カリウム投与による心肺停止モデル動物を作製して、チオペンタールによる脳神経保護作用の詳細な機序を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成30年度は創薬ツールと心肺停止症例データベースを用いた1次スクリーニングを実施する予定だったが、抗けいれん薬であるチオペンタールを候補薬を見出すことができた。さらに、平成31年度に実施する予定であった脳海馬由来神経細胞を用いた検討でも既に完了していることから、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、心肺停止モデル動物の作製し、平成30年度に見出した候補薬であるチオペンタールの治療効果を検討する。 マウス静脈内から塩化カリウムを投与して心肺停止状態を8分間維持した後心臓マッサージやアドレナリン投与により心肺蘇生させてモデルを作製する。もう既に心肺停止モデル動物の作製に関する予備実験を始めている。塩化カリウム誘発心肺停止モデルマウスに候補薬であるチオペンタールを投与した後、生存率をKaplan-Meier法により評価する。また, 脳切片を作製し候補薬剤の作用を神経組織学的にCresyl violet染色で検討すると共に, 低酸素誘導因子HIF-1α量をWestern blotting法により測定し薬理学的な作用機序も明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定より旅費が該当金額分削減されたため、次年度使用額として繰り越すこととなった。繰越金は別の学会参加に関する旅費に充てる予定である。
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